約 3,759,391 件
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1523.html
Aパートに戻る +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ゆっくらいだーディケイネ 第9話 ■Bパート ~ここから先は第3者の視点で書かせていただきます~ ~統一しろよと言う苦情は一切受け付けません~ ドゴオッ! 馬ケガレの一匹がついに月の都を囲む防護壁をぶち破り、月の都に潜入してしまった! 馬ケガレはそのまま月の都の中心にある月の宮殿まで突進していく! 「まずい!」 より姫は馬ケガレがぶち破った壁の穴から月の都に入っていく。 しかし、他の馬ケガレも出来上がった穴から都に突入しようとする! 「よりひめ様!ここは私たちが何とかします!」 それを食い止めたのはうさ耳ゆっくり率いるレイセンだった! 白い煙とシャボン玉で、馬ケガレの突入を防いでいる! 短時間でしかないが、それでも時間稼ぎにはなる。 「…すまない!」 よりひめはそれだけ言うと、全身から泡を出して一気に滑り出した! 凄い勢いで月の都に突入した馬ケガレを追いかける! しかし、よりひめが馬ケガレに追いつくより、馬ケガレが月の宮殿に突入するのが早そうだ。 月の宮殿まで後10メートル…9メートル…。 (くそっ!間に合わないか!?) よりひめがそう思った次の瞬間! 「・・・・・・・!」 突然、馬ケガレの足が止まる。 「何だ?」 よりひめは突然馬ケガレが足を止めたことに驚き、急ブレーキをかける。 馬ケガレの視線の先・・・・月の宮殿の巨大正門、 その正門に、二人の少女が立っていた。 「うわお、間近で見るとやっぱり洒落にならないほど大きいじゃん。」 「よくも私のかわいいゆっくりを苛めてくれたわね!この代償は高くつくわよ!」 「いや、勝手に自分の物宣言するな、この変態。」 「ちょッと!私の事を変態って言わないでよ!」 「ごめん、痴女だったか。」 「痴女ですらない!私はただゆっくりが好きな女の子よ!」 紅里と伝子であった。 何だが月の宮殿正門前で、漫才みたいなやり取りを繰り広げている。 「…あいつら、何でここに居る!?何をやっているんだ!?」 よりひめは二人の少女を見て混乱した。 と、伝子がそんなよりひめの姿を見つける。 「あ、よりひめだぁ~ゆっくりなのに凛々しい顔つきだぁ~でもそのギャップがよし!」 ……鼻血を出して親指を立ててグッジョブ、している。 「…何だこいつは…。」 よりひめは激しい頭痛に襲われた…。 「まぁ、とにかくまずは、この何かラオウが乗ってそうな黒い馬を何とかしますか!」 紅里はそう言ってペンダントとメダルを取り出した。 伝子も同じく、キーホルダーとメダルを取り出す。 『変身!』 二人は掛け声と共にメダルをそれぞれのアイテムにはめ込んだ! 『ユックライドゥ!』 『ディ・ケイ~ネ!』 『ディ・エイキ!』 光に包まれ、紅里はディケイネ!伝子はディエイキに変身した! 「…な、変身…したのか?」 よりひめは変身した二人をみて驚きを隠せない。 「そんじゃ、まずは目の前のケガレだか何だかよく解らない物を倒しますか!」 「ゆっくりを苛めた罪は重いわよ!」 変身した二人は馬ケガレのほうをにらみつけた。 そして、次の瞬間、驚くべきことが起こった。 「……ディ…けいね…。」 何と、馬ケガレがディケイネを見て言葉を発したのだ。 「え!?」 「け、ケガレが喋っただと!?そんな事は一度も…!」 いきなり喋ったケガレにディケイネもよりひめも驚きの声を上げる。 ケガレは更に喋り続ける。 「悪魔…すべての世界…滅ぼすゆっくり…!」 「ちょっと!ひょっとしてこいつ私が世界を滅ぼす的な事言ってない?」 「もしかしなくても言ってるわね。」 「滅ぼす…前に…潰す!」 馬ケガレはディケイネに向かって突撃してくる! 「う、うわっ!」 ディケイネはとっさにメダルをペンダントにはめた! 「ユックライドゥ!チチチチチチチルノ!」 ディケイネはチルノの姿に変身した! 「そいで持って!」 続けてメダルをはめる! 「スペルライドゥ!チルノ!」 凍符「パーフェクトフリーズ!」 氷の魂が馬ケガレの足元に向かって飛んでいく! ガチインッ! 馬ケガレは足元が急に凍った所為でバランスを崩した! そのまま横出しになる馬ケガレ! 「やった!」 「後は私が!」 そこへ飛び出してきたのはディエイキだった。 「ちょ、何であんたが!?」 「あんたの手持ちじゃ、ケガレに止めを刺すのは難しいでしょ、ここは私に任せなさい!」 ディエイキはメダルを取り出し、キーホルダーにはめ込んだ! 「ユックライドゥ!ゆーびぃ!」 現れたのは手足を持つゆっくり、ゆーびぃ! 「・・・ゴォオオオオオオオオオッ!」 ゆーびぃは物凄い勢いで吸い込みを始めた! 「う、うぉおおおおおお…!」 ギュポンッ。 馬ケガレはゆーびぃの腹の中に納まってしまいました。 「な、何と、…。」 「私達が数十人がかりで処理するケガレを、たった二人で…!」 戦いの様子を見ていたよりひめのお月のうさ耳ゆっくりたちが驚きの声を上げる。 と、その時だ。 「うわあっ!」 いきなりレイセンが上から降って来た! よりひめは慌ててレイセンをキャッチする! 「レイセン!いきなり上から降ってきてどうしたと言うんだ!」 ぼろぼろなレイセンによりひめは慌てて話しかけてみる。 「す、すみません、ケガレたちを食い止め切れませんでした・・・。」 レイセンはつらそうな顔でよりひめにそう言った。 ドドドドドドドド! 激しい足跡が聞こえてくる。 嫌な予感がしてディケイネ達が音のするほうへと振り向いてみると、 そこにはこちらに向かってくる馬ケガレの大群があった! 「うわ!」 思わず声を上げるディケイネたち。 「ディ…ケイネ…!」 「悪魔…悪魔…。」 「滅ぼす…もの…!」 しかも、全員寸分の類も無く、ディケイネの方向に向かってくる! 「うわお!?やっぱりこいつらも私狙い!?」 一気に迫ってくる馬ケガレの大群を見て驚きを隠せないディケイネ。 しかし、と惑っている暇は無い! 「ああもう、やるしかないか!」 ディケイネは決心すると、新しいメダルをペンダントにはめ込んだ! 「ユックライドゥ!テル・・・カグ~ヤ!」 ・・・何か一瞬名前を呼び間違えたがそこはスルーしてください。 とにかく今度はディケイネの姿がかぐやに変わった! 「ちょ!かぐやでどうやってあの軍団に対処する気なの!?」 ディエイキがディケイネにそう問いかける。 「ふふん、それは見れば解るわよ!」 そういってディケイネは一枚のメダルをペンダントにはめ込んだ。 「スキルライドゥ!かぐや!」 永遠と須臾を操る程度の能力 発動!!! かぐやは人には認識できないほどの一瞬――須臾を集める事が出来る。 これを利用することによって彼女は人には認識できない瞬間の世界で行動することが出来る。 ………即ち、どういう事かというと。 シュンッ! ドガッ!バキッ!ドゴッ!バキッ! 「・・・・・・!」 敵が認識出来ないほどの超高速で移動できるようになるのだ。 いわゆる仮面ライダーカブトが使うクロックアップと同じ物だと思えば良いだろう。 とにかくその能力を使って、ディケイネは馬ケガレ全員に攻撃を加えた! 「・・・・・・!?」 馬ケガレは何が起こったのか解らないまま倒れこむ。 着地するディケイネ。 「うっ・・・・。」 それと同時に、輝夜の姿から元のディケイネに戻ってしまう。 「うう、やっぱりかぐやの身体って働く事には向いてないようね………。」 かぐやのゆっくりとしての身体能力はパチュリーと同レベルと言われている。 そして、時間を操る能力は得てして身体に負担をかけるものである。 ディケイネは一瞬にして10時間は戦ったような疲労感に襲われた。 「あの、辛そうですけど大丈夫ですか!?」 うさ耳ゆっくりの一人がディケイネに問いかける。 「……大丈夫、それより倒れたケガレを浄化しないと行けないんじゃない?」 「……あ!」 確かに、倒れたケガレを何とかしないとまた起き上がってしまう。 そのことに気づいたうさ耳ゆっくり達はすぐに倒れた馬ケガレを洗いに向かった。 「それ、みんなでこいつらを洗え~!」 「お~!」 全員で手分けして馬ケガレを洗っていく。 外にいたうさ耳ゆっくり達も合流し、ケガレの洗浄作業は高速で行われた。 「ハイハイ!小さくなったケガレはみ~んなゆーびぃが吸い込んじゃいますからね~♪」 うさ耳ゆっくり達に洗われて小さくなったケガレは、全部ディエイキが召喚したゆーびぃが吸い込んでしまった。 ・・・何はともあれ、これで馬ケガレの脅威は月の都から去った。 月の都は馬ケガレが暴れまわったためにかなりの被害ででてしまったが、完全に破壊されてはいない。 「……お前達には助けられたな、礼を言う。」 よりひめはディケイネに向かってそう言った。 「…礼を言うのはまだ早いでしょうが…。」 そう言ってディケイネは歩き出す。 「……!何処に行こうと思ってるんだ、お前は!」 「まだ外に、あのケガレの親玉が残っているでしょうが。」 そう、まだ遥かにあの地平線を埋め尽くすほどの巨大なケガレが残っているのだ。 巨大ケガレは確実に月の都に近づいてきている。 そうでなくても、さっきのような馬ケガレを生み出して月の都を襲ってくるかもしれないのだ。 放っておくわけには、絶対に行かない。 「待て!まさかその身体であいつを倒しに行くつもりか!?」 「まぁ、そのつもりだけど。」 それを聞いたよりひめは正気じゃない、と考える。 ディケイネはさっきの能力を使った反動で、身体に強力なダメージを負っている。 これであのケガレに挑もうなんて、正気ではない。 「待て、お前を行かせる訳には行かない!」 「何よ、悪いけど私は行かないと決めたら行かないけど、行くと決めたらとことんまでいく女よ。」 「だとしても、貴様を行かせる訳には行かない、元々ケガレの問題は我々月のゆっくりの問題だ! 無関係な貴様を巻き込むわけには行かない!」 「……関係、あるとしたら?」 「!?」 「あいつら、私の姿を見たら「世界を滅ぼすゆっくり」とか言って襲ってきたでしょ…… どうやら今回月の都をあいつらが襲った理由って・・・私にあるみたいね。」 「そ、そうなのか!?」 「あんたの姉さんはケガレがあんなに積極的に攻めてくるのは始めてみたって言ってたわ、 その理由も多分私よ、私を倒すために、あいつらは必死になって月の都に攻め込もうとした。」 「…………。」 「だからあたし一人で行くのよ、他人に迷惑をかけるのは私の主義じゃないからね。 帰ってこなかったら、シェルターに居るれいむとまりさの事よろしく頼むわ、 ちょっと迷惑な奴だけど、根っからの悪人じゃないから。」 それだけ言ってディケイネは月の都から出ようとする。 …と、その時、ディケイネの身体がフワリと浮き上がった。 「え!?」 「……ならば私も助太刀されてもらう、恩を返せぬままにくたばってもらっては困るからな。」 よりひめがディケイネの身体を持ち上げたのだ。 よりひめはディケイネの身体を持ち上げると、全身から泡を吹き出した。 「ちょ、良いって下ろして!」 「悪いが!私もこうと決めたらテコでも動かんゆっくりでな! レイセン!悪いが怪我したゆっくりの手当てをしてくれ!」 「え、ええ!?二匹だけで行くつもりなんですか!」 不安げな表情でレイセンはよりひめにそう問いかける。 「大丈夫、私がそう簡単にやられるゆっくりではないからな。」 しかし、力強く答えるよりひめを見て、レイセンは確信した。 彼女を止めることは、不可能だと。 「…そ、そうですか…ではお気をつけて下さい!」 自分出来る事は、二人を見送ることだけだ。 「じゃあ私はゆっくりの手当てをさせてもらうわね。」 ディエイキはそう言って怪我してるゆっくりに向かっていく。 「さあみんな!お姉さんと包帯マキマキしましょ~ね!」 「・・・折角ですけど、遠慮します。」 「がーん!」 月のゆっくりにそう言われて、軽く落ち込んでしまったディエイキでした。 「そんじゃ、行きますか!」 「よし!いくぞ!」 よりひめはデイケィネを乗せて、凄い勢いで滑り出した! ~☆~ 地平線の向こうにあるオオケガレの元に向かう、ディケイネとよりひめ。 「……月の都に住むゆっくり達は元々人間に連れられてこの都にやってきたんだ。」 と、突然よりひめが口を開く。 「人間と私達は、穢れなきこの地を開拓し、力をあわせて月の都を作った。 私達はその過程で穢れを捨て、今のスポンジボディを手に入れたのだ。」 「ゆっくりって、穢れを捨てるとスポンジになるわけ?」 「らしいな、何故そうなるのかは私達にも解らん。」 どうやらゆっくりのいい加減さは何処に行っても代わらないらしい。 「やがて、人間と一部のゆっくりが更にゆっくり出来る場所を求めて新天地へと旅立った。 私達はここに残り、月の都でゆっくりしていく道を選んだ。 ・・・その時、去っていった人間のリーダーと約束したのだ、 何があっても、お前達は月の都を守り抜いて欲しい、ここは私達の故郷なのだと。 ・・・だからお前には感謝している、もう少しで…私は約束を守れなくなるところだった。」 「あの、何でいきなりそんな事を話し出す訳?」 「まぁ、目的地に着くまで暇だからな、それにお前にも私達の事を知ってもらいたかったのかもしれない。」 「ふぅ~ん…。」 「・・・そうこうしている内に目的地には着いたみたいだな。」 よりひめはそういって急ブレーキをかけた。 ディケイネの目の前のケガレは、ありえない大きさだった。 正にケガレの海、としか言いようが無い。 「さて、こんなデカブツをどうやって倒したもんだか・・・。」 ディケイネは、目の前に広がるケガレの海を見て、どうしたものかと考えてしまう。 「こいつには核がある、そいつさえぶち壊せば!」 「……その核は、何処にあるわけ?」 「まぁ、上から地道に探すしかないのだが。」 「……ホントにこいつを何とかできるのか不安になってきたわ……まぁ、仕方ないか。」 そういってディケイネはメダルを取り出した。 「ユックライドゥ!れみみりゃ!」 メダルをペンダントにはめて、ディケイネはれみりゃに変身した。 「今度は私が運ぶ番ね。」 ディケイネはよりひめを頭の上に乗せると、その翼で空中に舞い上がった。 「うわッととと……重力が弱いと飛ぶのも簡単じゃないわね。」 「だ、大丈夫なのか?」 「大丈夫、直に慣れるって。」 そういって、れみりゃになったディケイネはよりひめを乗せてケガレの海の上を飛んでいく。 「さて…核は何処に…。」 ディケイネは真下に広がるケガレの海をキョロキョロ見回してみた。 ……ケガレの海の丁度中心に当たる部分に、黒い球が浮いている。 「あれだ!あれがこのケガレの核だ!」 よりひめはその核を見て大声でそう叫ぶ。 「あれだけむき出しなんて、何てわかり易い・・・・。」 ディケイネはそう思いながらも、その黒い球の元へと近づいていった。 しゃれにならないほどデカイ。 間近でケガレの核を見たディケイネは、思わずそう思ってしまった。 「・・・まさか・・・自ら敵地に飛び込んでくるとはな、破壊の使者よ。」 しかも、その核が突然喋りだした。 「うわ、こいつも喋った!しかも口調が隔絶!」 「これだけからだがでかいと、脳みそも相当でかくなるようだな……。」 ディケイネも、よりひめも、ケガレが喋ることには驚いているようだ。 しかし、ならば聞いてみたい事があるとディケイネは考えていた。 「ねえ!月の都に攻め込んできた馬の化け物が私の事を見て世界を滅ぼすとか、言ってたけど、あれはどういう事なの!?」 ディケイネは核に向かってその質問を投げつける。 「…言った通りだ、貴様はいずれ、世界を滅ぼす…。」 「いや、だからそれが解らないんだって!そもそも私がどうやって世界を滅ぼすの!」 「解らん…だが貴様はいずれ世界を滅ぼすことになるとあのゆっくりが…!」 「…!?何、あんたにそんな事を吹き込んだゆっくりが居るってこと?迷惑な話ね。」 「いずれにせよ、世界が滅べば我も滅ぶ…だから貴様を、ここで潰す!」 ゴオッ! 核が言い終わると同時に、黒い触手がディケイネに向かって伸びてきた! 不意を疲れたディケイネは、避けることが出来ない! バシイッ! 「し、しまった!」 ディケイネとよりひめは、黒い穢れの上に叩き落されてしまった! 衝撃でれみりゃの姿から元の姿に戻るディケイネ。 そんなディケイネに向かって黒い触手が襲い掛かる! 「く!スペルカードで!」 ディケイネはすぐにメダルを取り出して反撃に移ろうとするが・・・。 「あ、あれ!?」 メダルをいれてあるポシェットが何処にも見当たらない、 見るとちょっと離れたところに、ポシェットが落ちている。 叩き落された時にポシェットを落としてしまったのだ! 「く、くそ!」 慌ててポシッェトを取りに行こうとするディケイネ! しかし、ディケイネがポシエットを取りに行こうとするより早く、黒い触手はディケイネの目前まで迫っていた。 「クッ!」 ディケイネは自分の身体が触手に貫かれることを覚悟して、その眼をつむった。 ガキインッ! 金属にぶつかった様な、変な音がする。 そして、自分の身体には全く痛みが走っていない。 「・・・・?」 ディケイネは疑問に思い、ゆっくりと目を開いてみた。 「・・・大丈夫みたいだな。」 ディケイネの目の前に、黒い触手を身体に突き刺したよりひめが立っていた。 よりひめが身体を張って、黒い触手からディケイネを守ったのだ! 「ちょ、よりひめ、身体にいろいろ刺さってるんですけど!?」 「心配するな、中身をチタン合金に替えた、皮は貫通してるが中身は貫通していない。」 言われてみれば、触手はよりひめの身体に突き刺さっているが、どれも突き刺さっているだけで貫通はしていない。 触手は、よりひめの身体から抜けて引っ込んでいく。 それと同時に、よりひめはその場にへたり込む。 確かに、身体は貫いていないが、それでもダメージはあったようだ。 「ああもう!無茶して!」 ディケイネはポシェットを拾うことも忘れてよりひめの元に近寄る。 「…フン、まだまだ元気なようだな。」 「それよりあんた!何て無茶を!」 「言っただろう?貴様を…死なせるわけには行かない…と。」 そう言うとよりひめはゆっくりと立ち上がる。 「…何故だ?何故貴様は自分の身を犠牲にしてあいつを守った? ゆっくりとはゆっくり出来ないことは決してやらない生き物じゃないのか?」 ケガレの核は理解できないといった様子でそう問いかけた。 「一度決めた事は最後まで貫き通す…それが出来ないゆっくりは死してなおゆっくり出来ないのだ。」 「…理解不能だ。」 「…そういえば貴様はこいつが世界を滅ぼすと吹き込まれてこいつを始末しようと思ったんだったな、 わが身可愛さにこいつを殺そうなんて考える貴様には理解不可能な考え方だろうな。」 そういってよりひめはディケイネを守るようにケガレの核をきっと睨みつける。 「私が立っている限り!こいつには絶対傷つけさせん!」 「よりひめ…。」 「…ならば、貴様を潰してからゆっくりこいつを始末させてもらう!」 先ほどとは比べ物にならないほど巨大で鋭い触手が形成される! 黒い触手はそのまま凄い勢いでよりひめに向かって飛んでいった! ・・・フニャ。 しかし、よりひめに突き刺さる目前で勢いをなくし、まるで空気の抜けた風船のように地面に落ちた。 「…え、一体何が起こってるの!?」 「な、何だ、力が……力が抜ける……!」 核は急に苦しみ始める。 「な、何だ、誰かが・・・誰かが私に何かしているのか!?」 核の真下にホログラムのようなモニターが映し出される。 そのモニターには驚くべき光景が映し出されていた。 ~☆~ 「皆さん!力をあわせてケガレを浄化するのです!」 「うぉおおお!みんな!よりひめ様をお助けするんだぁ~!」 「おおおおおおおおっ!」 大ケガレの縁に当たる部分では、月のゆっくりによる大ケガレの洗浄作業が行われていたのだ! とよひめの指示の元、レイセン率いる月のゆっくりたちが全員掛かりで大ケガレの洗浄を行っている。 中には大怪我をして、包帯が痛々しいゆっくりもいる。 しかし、そのゆっくりも自らの怪我を押して大ケガレの洗浄を行っていた。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ・・・ふう、もうきゅーけいしていいか?」 「まだちょっとしか洗ってないよ!れいむも頑張ってるんだからまりさも頑張ってね!」 「な、何でこんな事に・・・。」 れいむもまりさも、モップを使って大ケガレの洗浄に参加している。 全力で洗いまくってる月のゆっくりと比べれば、スピードはとろすぎるが・・・まぁこいつらにしては良く出来ている方だ。 「ゆーびぃ!吸って吸って吸いまくれ~!」 「ゆ~!」 「…無事で居なさいよ床次 紅里!あんたに死なれたらそれはそれでちょっと寂しいんだから!」 ディエイキもゆーびぃを複数召喚してケガレを吸わせ続けている。 月のゆっくり達によるケガレの戦場作業の勢いは留まることを知らなかった。 「…ねぇ、レイセン。」 とよひめが全力でケガレ洗浄中のレイセンに問いかける。 「…何ですか、とよひめ様。」 「お互い、都で大人しくしてろといわれたのに、ものの見事に約束を破っちゃったわねぇ。」 「…そう言えばそうですね。」 「後で怒られるかしら、よりひめに。」 「怒られるのは確定でしょうね……でも……私は例え怒られても、よりひめ様を助けに行くつもりでした。」 「あら、奇遇ね、私もよ。」 「……。」 「……。」 「ゆぷっ!」 こんなゆっくり出来ない状況で、二人は思わず笑い声を上げてしまった。 ~☆~ 「な、何故だ・・・あいつら何故そろいもそろって私に逆らう…!?」 大ケガレの核は自分を洗浄しているゆっくりの大群を見て、信じられない表情をしていた。 自分より弱い存在であるはずのゆっくりが諦めもせずに何故立ち向かう!? 大ケガレには理解できない光景だった。 「…簡単さ、こいつら全員、頭の固い頑固者だからさ。」 その答えを言ったのは、他でもないディエイキだった。 よりひめと共に、力強く大ケガレの核を睨みつける。 「ボロボロになっても私を守り抜くと決めたよりひめ、例え後で怒られると解ってもよりひめを守るためにやって来た月のゆっくりたち。 一度決めたことはそれこそテコでも動かさない、時にはその所為で迷惑をかけることもある、 ………だけど、その鋼の意思は、何者にも動かすことが出来ない!」 ディケイネの前に光りが3つ形成される。 「誰にも壊すことが出来ない鋼の『信念』……お前みたいな軟弱物に壊せると思わないで。」 そう、信念。 一度決めたことは意地でも守り通す、鋼の意思・・・。 その意思こそが・・・ディケイネに新たな力を与える! カッ! 激しい光に見舞われ、ディケイネの目の前に新たな3つのメダルが現れた。 月のゆっくりの信念がディケイネに新たな力を与えたのだ。 「よりひめ、やるよ!」 ディケイネはよりひめにそう呼びかけた。 「ああ、この身体、貴様に預ける!」 大声で答えるよりひめ。 ディケイネは現れた3枚のメダルのうちの一つをペンダントにはめ込んだ! 「ファイナルフォームライドゥ! ヨヨヨリヒメェ!」 ペンダントから声が聞こえると同時に、よりひめの身体が光に包まれ、そして変貌した。 全長がディケイネの祐に10倍はある巨大な刀。 これがよりひめの秘められた力、その名も『綿月の大太刀!』 「覚悟しなさいよ!この刀に切れないものなど、あんまりない!」 「…何だ、その曖昧にも程がある表現は。」 「地上で流行のきめ文句。 まぁとにかくあんたはぶっ潰しちゃうから!」 そう言ってディケイネは巨大な刀をケガレの核に突きつけた! 「フン!そんなもの、叩きおってくれるわ!」 ケガレの核の周りに無数の黒い触手が出来上がる! 今にもディケイネに襲い掛かりそうなほど、いきり立っている! 「…甘いね。」 それを見て、ディケイネは不敵な笑みをこぼした。 ズババババババアッ! 「な、何!?」 ケガレの核は驚きの声を上げる。 生成した触手が、地面から生えた無数の刃に叩き切られたのだから。 無論、これも綿月の大太刀の力である。 「ここまできたら素直に止めを刺されなさいっての。 まぁ、そんな訳だからいきなり行くよ!」 「ラストスペルライドゥ!ヨヨヨヨリヒメ!」 その言葉と同時に、綿月の大太刀が巨大な刃に包まれる! ディケイネはケガレの核の真上に飛び上がり、刀を振りかざした! 愛宕様「カクヅチの一閃」 「いっけえええええええええええ!」 ディケイネは綿月の大太刀を振り下ろし、ケガレの核を一刀両断した! 「ギャアアアアアアアアアアアアア!」 真っ二つにされた核はそのまま炎に包まれる! それと同時に、巨大なケガレの海にも火が広まっていく。 あっという間に、大ケガレは地上においても殆どないほどの暑い日に覆われたのであった。 ・・・え?そんな事したらケガレの海のど真ん中に居たディケイネまで火の海に包まれるんじゃないかって? それは大丈夫、デイケイネの周りだけ火が及ばなかったから、 ご都合主義の塊なんです、この炎。 「…終わったな。」 よりひめは元の姿に戻り、ディケイネに向かってそう言った。 「そうだね。」 燃え盛る大ケガレを見て、二人は勝利を噛み締めるのであった。 ~☆~ ・・・さて、この燃え盛る大ケガレを、別の場所で見ていたゆっくりが一人、 探偵物語の主人公がかぶるような帽子を深くかぶっていて正体はわからない。 だが、燃え盛る大ケガレを見て、そのゆっくりは軽くしたうちをしていた。 「…破壊の使者、ディケイネ…やはりアイツを生かしておく訳には行かない…!」 そういった次の瞬間、そのゆっくりの姿は消えていた。 ~☆~ 静かの海のそばに立っている紅里のお部屋。 その出入り口の前にれいむとまりさが立っていた。 その向かい側には、れいせんと綿月のゆっくりが居る。 「…ホントにもう行ってしまうのですか?」 「うん、名残惜しいけどお別れだよ!」 「もうじき宴が始まる、お前達には宴の主役として出て来てもらいたいのだが…。」 「ホントはまりさ達だって宴会に出たいぜ!だけど…。」 「…何か、お姉さん、ケガレが言ってた事を引きずってるから…。」 「…ケガレが言ってたこと…世界を滅ぼす…か。」 ケガレ達は世界を滅ぼすゆっくりであるディケイネを倒すために、月の都に攻め込んだ、 もしかしたら自分が居なければ月の都も被害を出さずにすんだのかもしれない。 紅里がそう考えていてもおかしくはない。 「全く、失礼なこと吹き込む人が居た物だね!」 「おねーさんは怖いところがあるけど、世界を滅ぼすほど悪魔じゃないんだぜ。」 「それは間違いないね!」 「……あいつに伝えておいてくれ、月の都はお前達をゆっくり歓迎する、 いつでも遊びに来てくれ、とな。」 「ゆっくり理解したよ!」 そういって部屋に入ろうとしたれいむとまりさ。 ……と、 そこで玄関から出てきた紅里と鉢合わせした。 「あれ?おねーさんどうしたの?」 「やっぱり宴会に出るの?」 「…れいむ、一つ聞きたいことがあるんだけど。」 紅里は冷たい口調でれいむに問いかけた。 「ゆ?」 「冷蔵庫に保管しておいた食べ物、この部屋から出ている間に何から何までなくなってるんだけど・・・これ、あんたの所為でしょ。」 「ゆ、ゆゆ!?何の事!?れいむしらないよ!? まりさが食べちゃったんじゃない!?」 「まりさは私と一緒に居たからアリバイがある。 アリバイが無いのはあんただけだよ。」 「…あ、そういえばよりひめさんたちが宴会に誘ってくれたんだった。」 そういってれいむはこっそり逃げ出そうとする。 そのれいむの頭を紅里がガッシと掴む。 「…本日の説教タ~イム。」 「うわああああああ!おねーさん許してぇ~!」 れいむは紅里に引きずられて部屋の中に入って行った。 「…そ、それじゃあ縁があったらまた今度!」 残されたまりさもそそくさと部屋には言っていく。 まりさが部屋の中に入ると同時に、よりひめの前から部屋が消えた。 「……え~と、何だ、このコメントしづらい空気は……。」 よりひめは背筋に少しだけ冷たい物を感じたのであった。 第9話、終わり! 第10話に続く オマケ、今日の伝子 ケガレがさって、復興が進んでいる月の都。 その中央にある、月の都の象徴月の宮殿。 「あっはぁ~~~ん。」 その宮殿の一室から、妙に色っぽい声が聞こえてきた。 その一室とは、月の宮殿の大浴場。 「はぁあ…良いわ、良いわよ、もっとあらってぇ…。」 大浴場では伝子が月のゆっくり達に全身を洗われていた。 彼女の表情は正に至福の表情で、だらしが無いッたらありゃしない。 「あの~お姉さん、私たち、いつまで洗っていればいいんですか?」 「私の気が済むまでよ…ああッそう、そこもっと丁寧に洗って…。」 「あれ?何か泡がピンク色に…ってこれ、お姉さんの鼻血が混じってる!?」 「この世界に来て本当によかったぁああああああああああ~~~~~ん。」 …ちなみに伝子はのぼせと鼻血の出すぎでまたも医療室に運ばれたのであった。 書いた人 かに NEXT 第10話 いない英雄(脚本→→sumigi氏) うさ耳ゆっくり(月のゆっくり)のアイデアといいかわいらしさといいたまりません! -- 名無しさん (2009-07-26 12 16 14) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/5044.html
このページはこちらに移転しました 曲がっている 作詞/なまこ この世の秩序は曲がっている チンコも左に曲がっている 俺の人生だけが 堕落へまっすぐと進んでいく・・・ この世の秩序は曲がっている 背中も手前に曲がっている 二次の空間に往けば まっすぐな世界が待っている・・・
https://w.atwiki.jp/compe/pages/309.html
空から落ちてきた少女の手当てをすることにしたクッパ姫とデンジ。しかしここで問題が発生した。 前提としてまず、この殺し合いにおいて主催者が支給したデイパックには、基本支給品一式とランダム支給品が三つ入っている。 そして基本支給品一式の内訳は地図、食料、ルールブックの三つだ。怪我の治療に使えそうなものはない。 なのでランダム支給品から使えそうなのを探すしかないのだが―― 「俺どれが怪我を治せるとか分かんね~!」 二人ともロクに支給品をチェックしてなかったので、使えそうなものを必死こいて調べるハメになっていた。 だがすぐにクッパ姫は、この状況を打破するためのアイテムを探し当てる。 「デンジ、これをこの少女に食べさせるのだ! それで治る!!」 クッパ姫がデイパックから取り出したのは、弁当だった。 これはとある世界の電脳空間で行われた聖杯戦争にて、サーヴァントの体力と状態異常を回復させる効果を持ったアイテム、桜の特製弁当である。 彼女はそこまでの詳細が書かれた説明書きを見ていないものの、とりあえずHP(ハートポイント)が回復するアイテムだと認識した。 なので食べさせれば傷が治る、とクッパ姫は理解しデンジに指示を出す。 「ハァ!?」 だが指示を受けたデンジは、あまりにも素っ頓狂な物言いに思わず驚愕で返してしまった。 クッパ姫の世界はキノコやナッツを食べれば体力が回復するが、彼の世界は違う。 デンジ自身は血を飲めば傷が治り、チェンソーの悪魔として戦えるが、それは彼自身だけの能力で、他の人間はそうじゃない。 彼は自分がものをそんなに知らない自覚はあるが、流石に弁当食って人間の傷が治るとは思っていなかった。 「ええい、いいから早くしろ!」 「はいは~い」 しかしクッパ姫が地団駄を踏みながら強く言うとデンジは素直に従った。 これがもし、デンジの仲間である他の公安のデビルハンターならば亀裂が生じかねない場面だが、彼は、クッパちゃんがそんなに言うならきっと治んだな、位にしか思っていなかった。 デンジはこの辺り、素直と言うか適当である。 そうして弁当をあ~んの要領で食べさせると、少女の怪我はみるみるうちに治っていく。 そんな見たことない光景に、デンジはちょっとビックリした。 それから弁当が半分くらい無くなるまで食べさせると、少女はもういいとばかりに手でデンジを止めた。 そして起き上がり、二人にお礼を言う。 「……助けてくれて、ありがとうございます」 「何、気にするな」 「ところでこの弁当の余り、俺食っていい?」 デンジの呑気な問いに少女とクッパ姫がそれぞれ了承し、彼は弁当を食べ始めた。 「くしゅん!」 一方、少女は湖に落ちたせいでずぶ濡れであり、思わずくしゃみをしてしまった。 これでは風邪をひく、と思ったクッパ姫は魚を焼くためにつけた火に当たるよう勧める。 ついでに自分も濡れていたので一緒に火に当たるクッパ姫。 「うめぇ!」 その横ではデンジが弁当の残りを食べているが、彼はここであることに気付いた。 (これ、間接キスって奴じゃねぇ!?) 弁当に付いていた箸で少女に食べさせ、同じ箸でデンジも弁当を食べている。これすなわち間接キスなり。 それに気づいたデンジは心持ち弁当を食べるスピードを落とし始める。 落ちたスピードでデンジが弁当を食べ終える頃には、少女とクッパ姫の服はすっかり乾いていた。 そうして落ち着いたところで、三人は名簿を読み始めた。 百以上の名前が書かれたものの中から知っている名前を探すのは、中々大変な作業だ。 「クソ! 読める漢字が少ねえ!!」 デンジ一人だけ全然違うことに苦戦していたが、それでも数分あれば知り合いがいるかどうかは分かる。 「何だと!? ピーチ姫がいるのか!?」 クッパ姫は自分がよく攫う無力な姫の心配をし 「うげっ、パワーいんのかよ。あいつ絶対殺し合い乗ってるぜ……」 デンジは絶対名簿も見ず、ノリノリで殺しあいに乗るだろう知人に対し憂鬱となり 「…………」 少女は何を思っているのか分からない無表情で、ただ名簿を見つめていた。 クッパ姫は少女のそんな態度に疑問を覚え、ぶつけようとする。 「おい、オヌシ……」 だがここでクッパ姫は、まだ少女の名前を聞いていないことに気付く。 そこでまずは自己紹介をすることにした。人に名前を尋ねるときは、まず自分からである。 「そういえば自己紹介をしてなかったのだ。 ワガハイは大魔王クッパ様だ! 名簿にはクッパ姫と書いてるが、断じて姫ではないのだ! そしてコイツはデンジ。ワガハイの部下だ」 「よろしくな~!」 「……野崎、春花です」 「うむ、分かった」 つつがなく終わる自己紹介。 こうして話は情報交換に移る。まずはクッパ姫から。 「ワガハイが知っているのはこのマリオ、ヨッシー、ピーチ姫の三人だ。 前の二人は放っておいても問題ない男だが、ピーチ姫はワガハイが守らねばならん!!」 「……男ほっといて姫を心配って、クッパちゃんってやっぱりソッチ系かな? お前、どう思うよ?」 「さぁ……どうなんでしょう……」 クッパ姫の熱弁を尻目に、デンジは春花に答えにくい質問をするが、彼女は上手く受け流す。 そのまま次はデンジの番。 「俺の知ってる奴はパワーだけだな。 一応仲間だけどこいつとんでもない奴でよ~。すぐ嘘つくし見得張るし、俺のじゃねえからいいけど人のポイントカード勝手に使うしでさ~。 おまけにこいつの猫助けたのに、未だに俺のことたまに殺そうとしてくるんだぜ」 「どういう知り合いなのだ……」 「とりあえずロクでもないことだけが伝わってきますね……」 仮にも仲間に対してあんまりすぎる物言いに、思わずリアクションに困ってしまう二人。 とりあえず多分殺し合いに乗っているので、見つけたら何とか止めるとデンジは宣言する。 そして話は春花の方へ移った。 しかし彼女の知人は名簿に載っていない。なので代わりに殺し合いの中で出会った危険人物について語る。 「私が出会ったのはこのペテルギウスって人だけです。 背中から黒い腕みたいなのが出てきて、愛とか勤勉とか怠惰とかよく分からないことをまくしたてながらいきなり殺しにかかられました」 「コワ~……」 「うむ、明らかに危ないヤツだな!! だが安心しろ。そんなヤツはワガハイとデンジで倒してやるのだ!」 「お、おう! 俺とクッパちゃんにかかればそのペテ何とかって奴も楽勝だぜ~!!」 いきなり襲われて不安に思っていると考えたのか、クッパ姫は春花に対し安心させようと啖呵を切る。 その言葉にどう思ったのか、春花は優しそうな笑みで応えた。 そしてとりあえず行動方針としては、まずピーチ姫とパワーを探すことにした。 ピーチ姫は戦う力がないので守りたいし、パワーが殺し合いに乗っている可能性が高いなら止めなければならない、というのがクッパ姫の判断だ。 デンジとしては、殺し合いという状況でパワーにはあんまり会いたくなかったが、流石に乗ってたら止めないとまずいよな、と思うのでクッパ姫に同意。 春花も特に異論は挟まなかった。 だが出発する前に―― 「……すみません、その前に、ちょっと……えっと、トイレ行ってきていいですか?」 「うむ、ここで待ってるから早く済ませてくるのだ」 春花はトイレをするためクッパ姫とデンジから離れていく。 それを二人は特に警戒せず見送った。 だから気付かなかった。 いつの間にか、傍に置いていたデンジのデイパックがなくなっていることに。 【E-4 ルート・レイク東/黎明】 【クッパ姫@Twitter(スーパーマリオシリーズの二次創作)】 [状態]:健康 [装備]:スーパークラウン(解除不可) [道具]:基本支給品、釣竿@ゼルダの伝説時のオカリナ、ランダム支給品×1 [思考・状況]基本行動方針:主催者を倒し、ワガハイが優勝する! 1:部下(デンジ)、ハルカと行動する。 2:この姿は慣れんが……ワガハイは強いからな!丁度良いハンデだ! 3:ピーチ姫を一刻も早く探し、守る。 4:ハルカが戻ってきたら移動する。 5:ペテルギウスに出会ったら倒す。 6:そろそろデンジにワガハイが本当は男であると伝えたほうがいいか……? [備考] 性格はマリオ ルイージRPGシリーズを基準としています。 スーパークラウンの効果は解除できないようになっています。 マリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。 春花と情報交換をしました。 デンジのデイパックがなくなったことに気付いていません。 【デンジ@チェンソーマン】 [状態]:健康 [装備]: [道具]: [思考・状況]基本行動方針:とりあえず主催者をぶっ殺せば解決だぜー! 1:クッパ姫、春花と一緒に行動する。 2:パワーかぁ~合流したくねえ~! でも殺し合い乗ってるのを見たら止める。 3:今は春花のトイレが終わるのを待つ。 4:姫を守るとかクッパちゃん、やっぱりソッチ系……? [備考] 時間軸は永遠の悪魔の後。 春花と情報交換をしました。 自身のデイパックがなくなったことに気付いていません。 ◆ クッパ姫とデンジから離れた春花は、トイレではなく一目散に東へと走っていた。 理由は距離を取る為である。 クッパ姫達に助けられた春花は、二人と話しながらずっとペテルギウスをどうすれば殺せるのか考えていた。 そして出した結論は至極単純。戦力の増強である。 彼女に支給されたスタープラチナは強力だが、それだけでは勝てない。 なぜなら彼女自身が脆弱だから。彼女自身がスタープラチナを用いた戦闘に慣れていないから。 春花が戦ったペテルギウスは、見えざる手と呼んでいたものを十全に使いこなして戦っていた。 だが彼女が持つスタープラチナは手に入れてそれほど時間があったわけでは無い。付け焼き刃もいいところである。 もし彼女がスタープラチナを十全に使いこなせるなら話は変わるかもしれないが、そこまで極める時間はどうやっても作れない。 だから彼女は違う方法で戦力を増強することにした。 それは、強力な支給品集めだ。スタープラチナに匹敵、あるいは上回る力を手に入れれば強くなれると単純に考えたのだ。 だからデンジのデイパックを盗んだ。クッパ姫のデイパックを選ばなかったのは、自分を回復させた弁当を取り出していたから支給品が少ないはずと考えたからである。 勿論これも付け焼き刃であることに変わりはない。その分頭を回さなければならないとは思うが、そこは頑張る。 「もう少し離れたら、デンジさんのデイパックを確認しないと……!」 とにかく疾走する春花。それは単純に距離を取りたいという思い以上に、二人への罪悪感があった。 そもそも、戦力を増強するなら支給品ではなく参加者を集めるという方法がある。 クッパ姫とデンジは殺し合いに乗っていない以上、適当に言えばペテルギウスと戦わせるくらいはできたはずだ。 にも関わらず春花はその手段を選ばなかった。なぜか。 それは、自分を助けてくれた二人と一緒に居たくなかったから。 これ以上二人の優しさに触れていると、殺し合いに優勝して願いを叶えるという決意が揺らぎそうだから。 なんてことのない、ただの感情である。 だがそんな弱さはもういらない。 これからは勝つためならどんな卑怯なこともしよう。 誰かを騙し、物を盗み、人を殺し、支給品を集め、屍の上で勝利を掴み、願いを勝ち取るのだ。 だから 「……ごめんなさい」 二人に対する罪悪感を、春花は意地でも押し殺す。 【F-4 南側/黎明】 【野崎春花@ミスミソウ】 [状態]:疲労(小) 背中に刺し傷(塞がっている)、二人(クッパ姫、デンジ)に対して罪悪感 [装備]:スタープラチナのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品、何かの石@出展不明、デンジのデイパック(基本支給品、ランダム支給品×3、ツルギゴイ@ブレスオブザワイルド、ヨロイゴイ@ブレスオブザワイルド(大量)) [思考・状況]基本行動方針:優勝して、過去を改変する。 1:早く二人(クッパ姫、デンジ)から離れたい。 2:ペテルギウスを殺すため、強力な支給品を集める。 3:デンジさんの支給品については後で調べる。 [備考] 参戦時期は死亡後です。 スタープラチナのDISCを装備しています。 スタンド使いになった影響か、ペテルギウスの『見えざる手』を視認できるようです。 クッパ姫、デンジと情報交換をしました。そのせいでマリオ達@スーパーマリオくん をマリオ達@スーパーマリオシリーズとして認識しています。 【桜の特製弁当@Fate/EXTRA CCC】 クッパ姫に支給。割り箸もサービスで付いている。 全て食べるとHPを中回復と不利な状態異常を解除する回復アイテム。 今回は二等分したので効果も半分。だが状態異常は回復した。 049:それは突然の出会いなの! 投下順 051:驚異 032:掴む者、離す者、離れる者 クッパ姫 066:アイ・ラフ・フューチャー デンジ 野崎春花 058 消えない 消えない 炎の影
https://w.atwiki.jp/jidoubunkorowa/pages/367.html
春野サクラは夢見キララの手を取ると町中を必死に走っていた。 この会場に気がついたらいて、動揺から立ち直ったところで話しかけてきたキララと互いの名前すら名乗る間もなく走り出すことになった原因が、彼女の目の前へと降り立つ。 「「危ないっ!」」 二人が互いを気遣う声をあげたのはなんの偶然か。そしてその口が閉じるより早く蹴り飛ばされる。 一蹴りで二人を、それも忍者であるサクラすらもキララを庇うことすらできなかったことが、襲う者と襲われる者の戦力差を端的に示している。 繋いでいた手が離れ地面を転がるサクラに広がるのは絶望。殺し合いに巻き込まれたのもまさかなら、その人物もまさかだ。 「終わりだ。」 サクラよりも何歳か年下だろう外見からは想像できない冷徹さでそう言う少年の目は、赤い瞳に黒い渦を巻いていた、 「写輪眼……アンタ、うちは一族の……」 「写輪眼じゃない、うず目だ、魔眼だがな。」 その瞳の特徴からサクラが連想するのは、同じ第七班の仲間であるうちはサスケだ。木の葉の名門にして忍界最強の瞳術を持つうちは一族は、サスケの兄によって一夜にして皆殺しにされたと聞く。圧倒的な強さもあってサクラがそれと勘違いするのも無理はなかった。 少年の名はタイ。サクラとは別の世界である日本で悠久の玉を得るために暗躍していた伝説の子である。そして伝説の子である証のその瞳は、期せずして写輪眼と同じ赤に黒。この瞳は彼に高い動体視力・身体能力・反射神経をもたらしていた。そしてそんな力を持つ彼に蹴られれば下忍であるサクラとて怪我は避けられず。 「くっ……がっ、あああ!」 「ふん、まだ生きてたか。」 ましてや肉体的には一般人のキララになど助かる道理がなかった。 いくら人気アイドルとしてレッスンに打ち込んでいるとはいっても、特別な異能などはない。 鋭い蹴りで腹の皮をぶち破り、内臓にまで直接ダメージが及んでいる。人間として、なによりアイドルとして致命的なその傷を自覚したことでキララの顔色が青くなる。その青さはすぐに失血によるものに変わるだろう。 タイが血に濡れた靴の爪先を地面になびり、彼女にとどめを刺そうと歩き出すのをサクラは見ていることしかできない。サクラにとっても先の一撃は今までの人生で最も大きいダメージだ。立ち上がるどころか意識すら保てそうにない。 (こんなに強いなんて、コイツ、カカシ先生ぐらいの身体能力があるんじゃ……) 絶望に沈む心で想像するのは、自分たち第七班の担当上忍。彼女の中では同じ写輪眼を持つサスケすらも文字通りに子供扱いする体術の使い手。もっともはたけカカシの場合は身体能力だけではなく体術そのものの技量が上忍としても高い水準にあるのだが、どのみちサクラからすれば目で追うのが難しいほどのスピードで動いているので大差はない。たしかなのは、下忍レベルのフィジカルしかない自分では抗いようがないということだけ。忍術も幻術も使わない相手に文字通りの一蹴をされて打つ手というものが思いつかない。 呆然と名も知らぬキララを見る。その口がかすかに動き、微笑んでいるのを、サクラは凝視した。。 (! それでも……) 「分身の術!」 (アカデミーの頃とは違う! しゃんなろー!」 写輪眼のように卓越した観察眼が無くても、キララの口の動きでわかる。 『逃げて』、そう言ったのだ、彼女は。 名前も知らない自分に、同い年ぐらいとはいえ忍者でもない女の子が、これから殺されるとわかっているはずなのに心配させないようにと。 「へぇ、幻か。それで?」 なんとか2人の分身を出したサクラを面白いものでも見るような目で見て、タイはキララに向けていた足を返す。これで少しでもこの危険人物を足止めできる。そう思ってサクラがクナイを取り出し構えた次の瞬間、タイの姿が消える。次いで訪れたのは、ボフンッ!という破裂音、そして腹部の熱。 「うっ、ああ、あああ……」 「やっぱり君はただの人間じゃないようだけど……それでもぼくは持ってる基本性能が違う。"格"が違う。」 タイの声が聞こえたのは自分のすぐ近く。視線を下に向けると、そこにはクナイを出したサクラの手を掴み彼女の腹へと突き刺したタイがいた。膝立ちになるような低い姿勢から見上げるうず目と目が合う。その瞳に吸い込まれるように意識が遠のく。それでも。 「変わり身の術!」 クナイから手を離し印を結べば、サクラの体が煙とかす。残ったのはクナイに突き刺さったサクラの服だけ。 「なにっ。幻か。ちがう、たしかに刺した。」 一瞬とはいえ視界を塞いだことが上手くいった理由だろう。深手を負っていたがなんとか術を発動すると絶望的な状況を脱することができた。サクラは聞き耳を立てタイの独り言から察する。 変わり身の術はアカデミーで習う基礎的なものだが、それゆえに相手の不意をつく基本的な術だ。本来は当たる前にやるものだが、変わり身用の木や動物の用意もなければ、相手が早すぎてタイミングを取ることもできない。 問題があるとすれば、キララを見捨てる形になったことだ。だが背に腹は替えられぬ。 「まだ気配は近い。先にお前を殺して……いや、いいことを思いついた。」 だがそう思った矢先にタイの声でサクラの顔が更に青くなる。何をする気だと思えば、先ほどサクラに刺さっていたクナイをキララの顔の前に持っていく。 何をする気だと言う疑問は続いて発せられたタイの独り言でとけた。 「そのきれいな顔をズタズタにされたくなかったら、さけんで助けをよべ。まだあいつは近くにいるはずだ。」 (なっ……! サイテーねコイツ!) サクラから見てもカワイイとしか言うしかないキララの顔の前に、クナイがチラつかされる。まさしく目の前に刃先を突きつけられ、瞳が潤む。傍から見ても心臓に悪いのだ、大怪我を負った上で当事者となっているキララの恐怖はどれほどのものだろう。それをわかってるタイはもう一度脅しの言葉をかけようとして、眉をひそめた。 キララは口だけは笑っていた。 「笑うな、なにがおかしい、おびえろ。」 「あ……あ……」 「そうだ、そのままさけべ。」 「あ──あっかんべぇぇぇ!!!!!」 「うるさっ!?」 大声を上げながら跳ねるようにキララの顔が持ち上がる。伝説の子として人間離れした身体能力や視力を持つ彼だが、聴力もまた人間離れしている。可聴域の広さと単純な耳の良さが仇となり、アイドルの大音声を顔の前でくらい、思わず耳を抑え上体を反らした。 そして耳を抑えるような時は、なぜか人間目までつむってしまうものだ。 「はっ! そこか!」 「しゃんなろおおお!」 気づいたときにはもう遅い。 サクラは変化の術を解くと、タイの手の中に持たれたままだったサクラの服が元の彼女の姿に戻った。 先の変わり身の術、実は変わり身などしていない。そもそもの話、ただ単に「変わり身の術」と口にして煙玉を使っただけで、実際に発動したのは変化の術だったのだ。 攻撃が当たったと騙す変わり身のように、変わり身だと騙す変化。下忍になるまでの彼女ではそんなふうに応用は効かなかっただろうが、今の彼女はうちは一族の末裔であるサスケと意外性ナンバーワン忍者のナルトと同じスリーマンセル、波の国で2人が見せた変化の術を使った連携をいまの自分にできる形で落とし込んだのだ。 「おおおおおお!!」 裂帛の気合と共に、先ほどまで掴まれていた手の平にクナイを振るう。最短距離で、かつそこには弱点だろう、瞳があった。 「まずい、がああああっくそがあああっ!!」 伝説の子たる証である第三の目、タイの場合は手の平にあるそれにクナイが突き刺さる。その瞬間、タイの妖力に乱れが生じた。 変化した自分を弱点を曝け出した手で掴んでくれた。その僥倖を逃しはしない。目なのだからきっと弱点だろうというサクラの希望的観測は、しかし、実際弱点。それ以前に感覚の鋭い手を傷つけられたことで一瞬のパニックとなる。とっさに払いのけるように手を振るうと、くるりと回って手が離れた代わりに自分からサクラに体を突っ込ませるような体勢になってしまう。そこにあるのは、先ほど刺さっていたクナイ。そして彼の超身体能力を反射的に無理やり作動させてしまい。 「がああああ、あ?」 すとんと、体の真ん中に吸い込まれていく。 クナイが、彼の心臓へとぶち刺さった。 信じられないものを見る目で、タイは自分の胸を見る。そこには黒光りするクナイ。ニ度見する。三度見する。クナイ。 「そんな……バカな……ぼくは、伝説の子なんだぞ……こんな、ことが……こんな死に方が……こんな、悪い、じょうだんだ……」 「……いやだ、こんな、死に方……」 「…………………」 タイの声が小さくなって、膝から崩れるように仰向けに倒れた。 「ハァ……ハァ……ざまあみろ……」 それを見送り、サクラもキララの横に寝転がるように倒れた。腹からの血は刺されたときよりも勢い良く流れている。激しい動きで動脈の傷が完全に開いたのだろう。そして大声を出したキララもまた同様であった。こちらはずっと仰向けだったので一見して出血は少ないが、サクラ以上に大量出血を起こしている。 「イッタぁ……どうしよう、これ……ダメかもしれない……ごめんなさい、助けられそうにないや。」 「ううん……さっきの、なに? マジック?」 「ただの変化……忍者だからさ。木の葉隠れの……」 「へー……すっごい……忍者……」 ぐにもつかない話をするのは、血を失いすぎて2人とも痛みを感じなくなってきている。意識が眠るように遠くなり、睡魔に抗うように喋り続ける。口を閉じたときが命の灯火が消えるときだと、本能的に察しているからか。 「そう、忍者……春野サクラ……第七班……木の葉隠れの……」 「キララ……夢見……キララ……アイドル……それで……この間……」 「春野……サクラ……サスケくん……」 「教室……アイドルで……行先……アイドル……マヨイ……迷宮……」 もはや互いの声も聞こえていない。自分が何を話しているのかもわかっていない。耳に血が行っていないため聴覚を喪失し、脳に血が行っていないため言葉を音としてしか認識できない。 それでも名前を名乗る。自分が誰なのか伝えられずに死んでいくのは嫌だという感情は残っている。何か言いたい、言って死にたい、それがたわごととして口から流れる。 それから10分ほど、2人はせん妄状態で意味の無い言葉を話し続けたあと、まず夢見キララが、その数分後春野サクラが、それぞれ心停止した。 (なんかきな臭いと思ったらこれか……これどこ行っても殺人事件起こっとるんちゃう?) 「ダメだ、死んでる……」 せやろな、と心の中で思うに留める。 名波翠は一難去ってまた一難という言葉を今日ほど噛み締めたことはなかった。 殺し合いに巻き込まれ、時間遡行の感覚を覚えて未来を変えようとし、テレパシーで相棒の死を感じて、明らかに殺し合いに乗ってそうな参加者を見つけ、ここまでで1時間ほど。人生で一番辛い時間だったと思う。だがそれから先1時間もそれと同じぐらい辛いことになりつつあった。 「心臓を一突きされた男の子と、お腹を刺された女の子、それにこっちは、どういう殺され方でしょうか?」 立ち話も何なのでと近くに見えた建物を目指したのが悪かったのか。カレンが自分たちが居たという農協に案内しようとするのをジュンが警戒したことに便乗したのが悪かったのか。行ってみたら漂ってきた血なまぐさい臭いにまさかなと思っていると、3人の子供の死体と対面した。 そしてそんな凄惨な殺害現場で比較的冷静にそう話すのが、翠が頭を悩ませている原因である参加者の少女、大場カレンだ。 カレンは、というかカレンの知り合いだという朱堂ジュンとカレンの同行者だという滝沢未奈は、どちらも殺し合いに乗っていた。テレパシーもそうだが、雰囲気が尋常ではない。それも単に事件に巻き込まれた人間のものではなく、事件を起こす側の雰囲気だ。これまで何回も普通ならば考えられない事件に巻き込まれているからわかる。この3人は絶対に気を許せない。 (なんで一度に3人も殺し合いに乗ってるやつに会うねん。もしかしてそういう子供ばっか集めとるんか?) 「アンタ良く平気だね。」 「これは殺し合いなんです、こういうことだって起こってもおかしくないでしょう? それとも、あのウサギの話を聞いて人が死なないドッキリだとでも思ったんですか?」 「そういうことじゃなくて、アンタの心について聞いてんのよ。」 「やめなよ二人とも……」 とても友好的とは思えない会話をしているが、これで元からの知り合いだというのだからいったいなんの知り合いだったのだと聞きたくなる。 (この3人に比べたらまだメイ子のほうがマシや。) 膝を折って遺体に手を合わせている玉野メイ子の姿は、3人と比べると一般人らしさがある。惨殺死体を前に真剣に祈りを捧げているのは割と普通ではないのかもしれないが、とにかく死者をいたんでいるのだから死者を増やそうとしている人間よりはマシだろう。これで自分のような能力を持ってたり自分と違ってあまり心根が良くなさそうなのでそこは心配だが、と自分を棚に上げて思う。割とどっこいどっこいの人間性である。 「いや待て、こいつ生きてるぞ!」 そして最後の一人で唯一の男子で一番まともそうな藤山タイガとどうこの4人を管理しようかと考えようとしたところで、彼の叫び声に耳を疑った。 「そんなアホなこと──ホンマや!?」 「少しだけど心臓が動いてる!」 メイ子と2人で駆け寄ると男子の胸に目をこらす。たしかに、かすかに上下していた。 (どう見ても心臓に刺さっとるよなあ。でも刺さってない……いやこれ絶対刺さっとるやろ。ど真ん中やん。それにこの子、なんや、この感じは……?) (ちっ、気づかれたか。このまま気をうしなったふりをしておこう。) ──タイは死んでいなかった。 たしかに心臓は刺された、妖力も上手く操れない。 だがしかし、しかしそれだけではタイを殺し切るには足りなかった。 タイ自身も自分の体の再生能力には驚いていたが、彼は子供の頃から親代わりの男によって虐待を受けて育つという哀しき過去がある。その過去が彼に、姉の竜堂ルナをも上回る再生能力をもたらしていた。 とはいえ、心臓に何か刺さっても刺さり方が良かったので生きながらえた、というのは時々聞く話。これは精々、常人なら確実に死んでいた傷が、ギリギリで自然治癒が見込める程度でしかない。動かず喋らず身動ぎせず、それで少しずつ傷が閉じていっているレベルだ。しかもクナイが刺さったまま。それでは治ったとしてもまともに動けないが、背に腹は替えられぬ。わずかでも動かせば途端に血が吹き出るという予感がある。 「なるほど、死人ではなく、怪我人ですか。」 そしてもう一つ。今喋ったカレンと呼ばれている少女。彼女が話した途端に場の空気が剣呑なものになった。理由はわからないが、カレンかもしくはカレン以外も何か危険なものを感じる。タイは顔が強張るのを抑えられない。今の自分はほんの少し喋るだけでも、大きく息を吸うだけでも死にかねない身。狩る側から狩られる側に回ったことを、突き刺さる少女たちの視線から理解した。 【0139 森・『チーム過半数ステルスマーダー』】 【タイ@妖界ナビ・ルナ(5) 光と影の戦い(妖界ナビ・ルナシリーズ)@講談社青い鳥文庫】 【目標】 ●大目標 殺し合いに乗る。 ●中目標 心臓の傷が塞がるまで死んだふりをして安静にする。 ●小目標 こいつら、いやな気配がする…… 【名波翠@宇宙からの訪問者 テレパシー少女「蘭」事件ノート9(テレパシー少女「蘭」事件ノートシリーズ)@講談社青い鳥文庫】 ●中目標 このグループ危なすぎるわ、なんとかしないと…… ●小目標 この子生きとるんか? そもそも人間か? 【大場カレン@生き残りゲーム ラストサバイバル つかまってはいけないサバイバル鬼ごっこ(ラストサバイバルシリーズ)@集英社みらい文庫】 【目標】 ●大目標 バトル・ロワイアルを優勝する。 ●中目標 このグループを利用する。 ●小目標 うまくごまかしてマーダーだとバレないようにステルスする。 【朱堂ジュン@生き残りゲーム ラストサバイバル 最後まで歩けるのは誰だ!?(ラストサバイバルシリーズ)@集英社みらい文庫】 【目標】 ●大目標 優勝する。 ●中目標 命の百合を手に入れる。 ●小目標 うまくごまかしてマーダーだとバレないようにステルスする。 【滝沢未奈@絶体絶命ゲーム 1億円争奪サバイバル(絶体絶命シリーズ)@角川つばさ文庫】 【目標】 ●大目標 由佳(妹)を助けるために1億円とせっかくなら命の百合を持ち帰る。 ●中目標 このグループを利用する。 ●小目標 うまくごまかしてマーダーだとバレないようにステルスする。 【藤山タイガ@絶滅世界 ブラックイートモンスターズ 喰いちぎられる世界で生き残るために@集英社みらい文庫】 【目標】 ●大目標 主催者をぶちのめして生き残る。 ●小目標 目の前の男子(タイ)を助ける。 【玉野メイ子@サイキッカーですけど、なにか? (1)ようこそ、ウラ部活へ!?(サイキッカーですけど、なにか? シリーズ)@ポプラキミノベル】 【目標】 ●大目標 まず死にたくない、話はそれから。 ●中目標 とりあえず翠に従っとく。 ●小目標 目の前の男子(タイ)を助ける。 【脱落】 【春野サクラ@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】 【夢見キララ@迷宮教室 最悪な先生と最高の友達(迷宮教室シリーズ)@集英社みらい文庫】
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/877.html
くちゅ…くちゅ…くちゅ… 自分の体から発せられる淫らな水音が静かな部屋に響く。 目を閉じるとその音は余計に耳に響き神経がまた高ぶる。 裸の二人。 甘い吐息が私の頬を撫で、ラブの顔が迫ってくるのがわかる。 「あっラブ!もうイッちゃう!早くキスして!」 いつもの様にラブの指で絶頂に達しようとした寸前、 スッとラブが私の中から指を抜いた。 吐息も去り、キスもお預け…。 んっ…もう意地悪…。 潤んだ目を開けてラブの顔を覗く。 「せつな…今日はいいものがあるんだ。 使ってみてもいい?」 私の視線を避けた気まずそうなラブの表情に嫌な予感。 「えっ…なに…?」 「これ…」 ラブがベッドの下に置いてあった紙袋からゴソゴソ何か取り出した。 これって… 「もっとせつなのエッチな姿が見てみたいんだ…嫌?」 心臓が止まりそうだった。 ど、ど、ど、何処でこんなもの?! 双方に同じものを型どった…本物の肉体の様な… シリコンの……? 作りものだけど…これって… 男の子の…でしょ…? 「…いいわよ」 頭はパニック状態なのに何故か自然と了承の言葉が出た。 …いいわ。ラブが望むのなら何でもしてあげる。 でも―― 体の快感より、ラブの指、ラブの一部が自分の体と繋がる事が何より幸せで心が満たされる。 たかが作り物でも男の子の“ソレ”が私の中に入るのはラブは嫌じゃないの? 単に興味本位なだけ? ……こんなもの入るの……? 「いれるよ…」 ラブ、何だか目が冷たいわ。 頭は更にパニック。怖い。 そんな私にためらう間もなく、 もう入り口にソレはあてがわれズリズリと入ってくる。 「ーーーッッ!!」 涙が出た。 引き裂かれる様な鋭い痛みが奥からズンと突き上がってくる。 恥ずかしいほどこんなに濡らして、 さっきまでラブの指を吸い付く様に欲し貪欲に快楽を生み出していた場所と同じとは思えない。 ーー痛い。 「痛い?大丈夫? 辞める?」 私を気遣う不安そうな声。 怖くて目は開けられないけど、真っ暗闇の中にいつもの優しいラブの声が響き安心して体の力が抜けた。 「んっ…大丈夫よ…続けて…」 「凄く綺麗だよせつな…」 優しく髪を撫でられ、ラブの舌が私の唇を這いながらその中を割って押し込まれてくる。 入ってきたラブの舌を歓迎するように優しく吸う。 ラブ…愛してるわ。 下腹部がまた熱くなり密がじわりと垂れていくのがわかる。 痛みは次第に鈍く変化し奥からじわじわと快感が生まれてきた。 人間の体は不思議。 …本来男性器を受け入れる様に出来てるもの当然か。 そう思うと心に少し虚しさが広がった。 「あぁーっ!!」 その思いを打ち砕くように突然激しい快感の波が襲ってきた。 初めて味わう感覚。 腟の中を次々と熱い快感の波が風船の様に膨みながら突き上がってくる。 ――凄い。 もっと、もっと奥まで欲しい。 「せつな…慣れてきたみたいだね、奥まで挿れるよ」 ラブは右手でソレを膣の深くにネジこんできた。 ちょうど半分の長さまで入ると、中で上下させソレを握り締めた手が私の突起にわざと擦れる様に動かしてくる。 舌で乳首を押し付けながら円を描くように舐められ、 もうひとつの乳首は左手でくりくりと摘まれる。 強烈な全身の快感に腟の奥がまた熱を上げ疼き、密は止めどなく体外へと溢れ、理性が遠退き我を忘れて泣き叫ぶ様に喘ぐ。 「あああーっ!すごいっいいっ!ダメぇ!ダメょ!あぁ!ラブ!ラブっ!!!」 「ねぇ…せつな… せつなの中に入ってるの、男の子のだよ?」 ラブの冷たい声が耳の奥に響き殴られた様に理性が戻された。 「男の子とするのってこんな感じなんだよきっと。 多分もっと気持ちいいのかな…。 もうあたしの指なんかじゃ物足りなくなるんじゃない?」 そう言ってわざと音がよく響く様にドロドロに密の滴った穴に深く出し入れし掻き回す。 「馬鹿…そんなこと!あぁんっ!」 「ホントにエッチな体だね。こんなに濡らして、すっごい締め付けてるのもわかるよ。…ねぇ男の子とエッチしてるとこ想像してみてよ。 誰でもいいよ? ウエスターでもサウラーでも。 あ、大輔とかは? ふふっ。 意外と興奮したりし」 「何でそんな…! 何でそんな酷いこと言うの!?私はラブしか嫌なのに!もう嫌っ!」 体の快感も痛みもスーッと氷の様に冷たく退き、変わりに恥ずかしさと虚しさで胸が締め付けられ勝手に涙が溢れた。 突然ラブの体が私へ崩れ落ちる様に降ってきて激しく抱きしめられた。 首筋にラブの涙が当たる。 「ごめんねっせつなっ!せつな凄くモテるからいつも不安と嫉妬だらけでもう頭がおかしくなりそうなんだ! いつか男の子に抱かれたらやっぱり男の子のほうがいいって、そしたらあたし捨てられるのかなって …ぅ、うぇ~ん」 「馬鹿ねラブ…そんな事!絶対しないわ!」 本当に馬鹿な子。 ホッとして私もまた涙が溢れた。 ラブの体をひき離し涙でグシャグシャになったラブの顔に頬擦りする。 「あたしがしたいのは一生ラブ一人だけよ。もう泣かないで」 「うわ~ん!せつなぁぁ~!」 ぐずり泣きした子供の様な顔に、いつものラブの愛くるしい笑顔がふわっと戻る。 ホントに素直で単純ね。ふふっ大好きよラブ。 「ねぇ…さっきせつなが男の子とエッチしてるの想像して狂いそうなほど嫉妬してるのに物凄く興奮してたんだ。 あたし変かな…?」 質問には答えずラブの下腹部に手を伸ばす。 ぐぢょりといやらしく音を立てた。 「んっ!!」 驚いたラブは真っ赤になって顔を背けた。 「……ねぇラブ、 その…これ、両端の先端が同じ形になってるって事は私に入れたままラブの中にも入るわよね? 最初からそのつもりだったんでしょ?」 「えっ!いやっ!そんなこと…」 モジモジするラブを今度は私がベッドに押し倒し、 私と半分繋がったままのソレを手で支え、反対側の先端をラブの入り口にあてがう。 ぬちゅっと音を立ててラブの中に抵抗なく吸い込まれていく。 「あああん!凄いよせつなっ!!」 残り半分のソレはすっぽりとラブの中に収まり、ラブの秘肉と私の秘肉が真ん中でぶつかった。 ぐぢょり。 指でラブの突起と自分の突起をプクッと剥き出して、 小さな突起同士がピタリと擦り合わさる様に腰を落とし前後させると突起と膣が同時に刺激されビリビリと今まで以上の物凄い快感が体中を走った。 「いやぁぁ!!せつなぁ!これやばいよぉ!」 「ラブ…ねぇ、一人でコレ挿れて遊んでたんでしょ? こんな…っ すぐに気持ち良さそうにして…ん?」 「あんっ ちがぁっ違うよぉっ ああああっ!ダメだよせつな!動かないでぇっ!」 甘い声を出し、顔を手で覆い初々しく恥じらうラブ。 滅多に見せてくれない快感に耐える可愛い姿…。 もっと魅せて。 興奮して余計に腰が止まらない。 「ラブこそ本当は男の子とエッチしてみたかったんじゃない? 厭らしい子ね。 ねぇ…もっと突いて欲しかったら腰を上げなさいよ!」 自分の顔を覆ってたラブの両手が急に上に伸び、私の腰をガッチリ掴んだ。 「もぉ~!せつなのばかぁ!お仕置き!」 ズチュッ!ズチュッ!ズチュッ! ラブは突き上げた腰を激しく上下に振る。 下から深く突き上げられる度に熔けた熱を帯びた快感が突き刺さる。 「やああああぁ!!」 思わず腰を浮かそうとするが、凄い力で腰を掴まれているからこの快感からの逃げ場はない。 うぅ…私が上でも結局ラブに主導権はとられるのね。 グチュグチュと部屋に響く淫らな水音は勢いを増し、媚薬の様に益々心を狂わせる。 もう爆発寸前。 ――ラブ!お願い! 早く!早くちょうだい! 「ラ、ラブ!もうっ!ダメ!ダメ! イッちゃうーっ!お願いキスして!!」 ラブにのし掛かる様に激しく抱き付き、全身の肌が擦れあい舌と舌が絡まった瞬間、 膣の中で膨れ上がっていた熱いものが爆発し、 寸前で焦らされ続けた快感の渦が一気に解放され洪水の様に蜜が体外に吹き出した。 はぁ…はぁ…はぁ… 凄いことしちゃったわ…… もはや意味を為さない程ズブ濡れたシーツの上に向かいあって転がった。 「ねぇ…ラブ、どうやって、あれ…手にいれたの? どして?」 ラブは少しうつ向いてまたモジモジしてから満面の笑みで顔を上げた。 「言っわな~い!」 ムッとして私は無言でラブに背を向けた。 「わわっ!ごめんごめん!じょ、冗談だって!それはまた詳しく説明するけど、もうこれは今捨てる。やっぱさ、お互いの体だけでせつなと愛しあって幸せゲットしたいもん!」 そう言ってラブは後ろから抱き締めてくれた。 「え?私はまた使いたいわよ。ハマっちゃったわ」 「えぇ!そんなぁ~!」 もう、本当に騙されやすいんだから。 ラブに気付かれない様に笑いを必死に堪えた。 こんなに愛しい貴女以外、私が他に何を欲しがるっていうの? ―ラブ愛してるわ。 終
https://w.atwiki.jp/ogasawara/pages/317.html
巨大な針が自分の頭を狙っている。 針の先が開いた。 そして閉じた。 頭に針が突き刺さるまで、三秒だった。 ――アシタスナオは、その三秒で死を覚悟することはなかった。 単純に、死という物を、それが目の前に迫っていると言うことを連想できなかった。 Fに成る。それは自ら望んだことだった。 その思いが、願いが。 この死に直面しているはずの状況から思考を曖昧な物にする。 ただ、ぼんやりと漠然と、不明瞭に、不鮮明に、模糊たる方向へと意識を滑らせていく。 (外交――出来なくなるかな) 藩国に残した面々の顔。 息苦しい...呼吸が出来ない。 (あれ、俺サイボーグだったっけ。じゃあ苦しくないか) すぐ傍にいるはずの玄霧の顔。「アシタクンガンバレ」とたぶん言っている。ハルとソート、サイボーグになりたいと呟いたときにいた。 (どうなるんだ、Fに成れるのか。成って、成ってどうするんだっけ。外交――) 今までに出会った、藩王と摂政の顔。猫もいれば――犬も。 これが走馬燈だと気づくのは三秒よりあとで、 ああ、俺って死にかけてるんだな... その事実を肌に感じたのは、もう少し後。 死に。たくないよなあ、やっぱり。 /*/ でもこれは...死んだかな。 /*/ スーツ姿の男が、止めた。針は刺さってない。 息が出来ない。 良く分からないなにかに包まれている状態は解けていたはずだった。 地面に転がり落ちていた。 口に砂利の味がした。葉っぱが湿って腐った様な臭いもする。 サイボーグなのだから息は必要ないと数瞬前の玄霧の声がした。 それでも苦しい。 皮膚という皮膚から汗を噴きだしていた。 喉と舌が、活きのいいナメクジみたいに意思と関係なくひくひくとしている。 口からだらしなく涎がたれて、喉を伝っている。 「ご協力感謝。」 どこからか、声が反響している。物凄く近くか遠いところからの声だった。 耳の裏側がうわんうわんとやかましい。 涎みたいな汁が耳の底に溜まっていると思った。 眩暈がする。迷宮の中だというのに、太陽を直視したように空が明るい。 吐き気がする。手足が痺れて動く様子もない...喉も痙攣して、声が出ない。 土は冷たかったが、湿っていたので服が濡れて不快だ。 いやだ、叫びたい、暴れたい、逃げ出したい。 心にゆとりが全くない。 たった数秒で精神を根こそぎ持って行かれた。 自分は、あのとき、死にかけていたのかもしれない。 「そもそもFがいっていることが本当とは思えない」 遠く/近くから声が聞こえているのに...その言葉の意味が理解できない。 本当――嘘、F、人間、端末、分解――針、死、Fになる、本当ではない。 Fに――なれない。 えー! と声を出したはずだった。 耳鳴りがうるさくて自分の声が聞こえない。 声だけを聞こうとすると、今度は心臓の音がうるさい。心臓が直接殴られているんじゃないかという程だった。サイボーグの自分に心臓などあったのだろうか... けれど、 「機械になりたかったのかい?」 その声だけは聞こえた。 声の意味も。 (そうだった) 機械に――なるんだった。 別に死ぬわけじゃない。 怯える必要なんて無い。 けど、死にかけた。 「うーむ、なんというか。彼の希望ですので」 誰かの声。 そうだ、それが希望。Fになる。 自分が機械になる。 それが目的。 なら、だから―― ――この手が震える理由なんて無いはずないのに。 握ろうとして、汗で指が滑る。 自分の声だけが、まだ聞こえない。 死に直面した。 喉に固まりが詰っているかのようだ。 心が脅迫されて、その恐怖がいまだに拭えない。 それでも、なにかを言ったはずだった。 強がるようなことを言ったはずだった。 けど、その人は自分の震える手を見ていた。 瞼に溜まった汗と涙を見ていた。 「...それがいい。きっと、生身の君に抱きしめてもらいたい人もいる」 その人の顔は、印象には残らない。 だけど、自分はその声を、声に込められた感情を一生忘れないだろう。 そう思えた。 「...わかりました。一度退いておきます」 自分は――まだ迷うべきだ。 じゃないと、きっと後悔してしまう。 死ぬことなんて、今更、怖くはない。 けれど、 今日俺は、覚悟もできないままに死にかけた。 別離れの言葉を、心の中でさえ呟けはしなかった。 ただぼんやりと、状況に流されて、そのまま機械へと... それがどういうことなのか、受け入れる心構えは自分にあったのだろうか。 覚悟も、迷いもないままに自分を終わらせようとしていた。 それは、とても恐ろしいことなのだ...ろう。たぶん。 その実感すらないことが、今は怖い。 俺は、 ――次にこの人に会えたときまでに、答えを出せるのだろうか。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 名前 コメント ご発注元:玄霧@玄霧藩国様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=191;id=gaibu_ita 製作:はる@キノウツン藩国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=765;id= 引渡し日:2007/ counter: - yesterday: -
https://w.atwiki.jp/mahabharatapotal/pages/1852.html
第13-4章.第13-5章.第13-6章. 第13-5章. ユディシュティラは言った、「宗教の真理を知る者よ、私は慈悲の功徳と敬虔な人の特徴を聞きたい。慈悲の功徳と、敬虔な人の特徴についてお聞きしたいのです。 ビーシュマはこう言った。「これに関連して、この古代の伝説、ヴァーサヴァと高邁なスーカの物語を例として挙げます。カシの王の領地で、一人の鳥使いが毒矢を持って、カモシカを求めて村から狩りに出かけた。肉を手に入れたいと思い、大きな森で追いかけっこをしていると、すぐ近くにカモシカの群れを発見し、そのうちの1頭に矢を放った。カモシカを倒すために放たれたその矢は狙いを外れ、森の大木に突き刺さった。猛毒の矢が突き刺さったその木は、葉も実も落として枯れてしまった。こうして枯れ果てた木の幹の空洞にずっと住んでいたオウムは、森の主を慕って巣を出ようとしなかった。動かず、食べ物もなく、無言で悲しみに暮れるそのありがたくも高潔なオウムも、木とともに枯れていった。パカの征服者(インドラ)は、高貴な心を持ち、寛大な心を持つその鳥が、不幸にも幸福にも影響されず、並外れた決断力を持っているのを見て驚嘆した。どうしてこの鳥は、下等動物の世界ではありえないような、人道的で寛大な感情を持つようになったのだろう?ひょっとすると、すべての生き物が他者に対して親切で寛大な感情を呼び起こすことが見られるので、この問題には何の不思議もないのかもしれない」ブラフマーナの形を仮定して、サクラは地上に降り、鳥に向かって言った、--スカよ、鳥の中で最も優れた者よ、ダクシャの孫娘(スキ)は(彼女の子孫としてあなたを持つことによって)祝福されるようになった。神々の長よ、あなたを歓迎します、私は私の厳しい苦行の功徳によってあなたを認めました、よくやった、よくやった。ヴァーラを滅ぼす者は、そのオウムが非常に徳の高い性格であり、行いに功徳があることを知っていたが、それでもなお、その木に対する愛情の理由を彼に尋ねた。この木は枯れ、葉も実もなく、鳥の隠れ家にはふさわしくない。それなのに、なぜあなたはこの木に執着するのですか?この森も広大であり、この荒野には他にも多くの立派な木があり、その窪みは葉で覆われている。聡明な分別のある忍耐強い者よ、汝は枯れて葉を落とし、もはや何の役にも立たないこの老木を見捨てるがよい』」。 ビーシュマは言った、『徳の高いスカは、サクラのこの言葉を聞いて、深いため息をつき、悲しげに彼に答えて言った、--サチの妃、神々の長よ、神々の定めは常に従うべきものである。汝が私に問うたことの理由を聞け。私はこの樹の中で生まれ、この樹の中で私の性格のすべての良い特徴を身につけ、この樹の中で私は幼少期に敵の攻撃から守られた。罪なき者よ、なぜ汝はその優しさにおいて、私の人生における行いの原則に手を加えようとするのか。私は慈悲深く、敬虔に徳に励み、行いに堅実である。親切な気持ちは、善良な者たちの間で美徳の偉大なテストであり、この同じ慈愛と人道的な気持ちは、有徳な者たちの永遠の幸福の源である。すべての神々は、宗教における疑念を取り除くために汝に問う。このため、主よ、汝はすべての神々を支配する立場に置かれた。千の眼を持つ者よ、汝は今、この木を永遠に捨てるよう私に勧めるべきでない。この木が善良であったとき、私の生命を支えてくれた。パカの高潔な破壊者は、オウムのこの善意の言葉に満足し、彼にこう言った。インドラは、オウムのその木に対する大きな愛着と彼の高い人格を知って、満足し、その木にすぐに甘露をかけさせた。大王よ、オウムもまた、その慈悲の行為によって、その生涯の終わりにサクラの伴侶を得たのである。このように、人の主よ、敬虔な者たちとの交わりと交わりによって、木が鸚鵡との交わりによって死ぬように、人はすべての欲望の対象を得るのである」。 第13-4章.第13-5章.第13-6章.
https://w.atwiki.jp/hanazonored2007/pages/302.html
壊れていくこの世界で 発売日 2002年3月27日 ユニバーサルJ UUCH-5055 PIERROT are Vo. キリト G. アイジ G. 潤 Ba. KOHTA Dr. TAKEO ■ 01. 壊れていくこの世界で・ words キリト music キリト 編曲 PIERROT 佐久間正英 ■ 02. REBIRTH DAY・ words キリト music アイジ 編曲 PIERROT 佐久間正英 戻る
https://w.atwiki.jp/sousakurobo/pages/847.html
本当に、これでいいの? このまま何も出来ないまま消えていって、それで良いの? ―――――――――――――――――――――――――――――――違う。 違う。このままじゃ私は……逃げているだけだ。これじゃ駄目だ。 私には……私にはまだ、会いたい人がいる。守ってあげたい人達が、沢山いる。 閉じていた目を開けて、私は力一杯に泳ぐ。どれだけ無様でも良い。もがいて、もがいて、ここから抜け出すんだ! だけどどれだけもがいても、私の足は引きずり込まれる様に海に飲み込まれていく。嫌だ……嫌! 何も出来ないまま消えていくなんて……絶対に、嫌だ! 諦めない……諦めたく、無い! 「メルフィー、こっちだ」 途端、私の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。この声……。 遠くから私を迎えてくる様に、光が広がっていく。あの光だ……! 私は必死にもがいて、その光の元へと泳ぐ。体は重いけど、抗えない程じゃない。光が次第に強くなっていき、誰かが私へと手を指し伸ばす。 「まだ……終わりじゃない! 心から、叫ぶ。私はその掌をぐっと掴んだ、瞬間。 私の頭に雪崩れこんでくる、膨大な情報の激流。 その情報量に気圧されそうになるけど、私は目を逸らさず真正面から、その情報を理解する。理解し、覚える。 ヴィルや鈴木君がやってきた世界の事。 大事な人を守る為に必要な、戦う、術。 そして、私が辿る――――――――――いや、辿ったかもしれない未来の事。 その情報のどれにも、私は驚きを禁じ得ない。根っから信じられるかと言われれば、現実味が無さすぎてイエスとは答えられない。 けど、今は―――――――――――――全てを、信じる。それが皆を――――――――――――――。 全てを、救えるなら。 『やはり来たか、鈴木隆昭』 鈴木隆昭の背後で、何時の間にか戻ってきているオルトロックが、鋭利な輝きを秘めた左右5枚の刃を、両手から熊手の如く、手の甲に召喚する。 メルフィーはまだ目を覚まさない。立ちあがって振り向き、隆昭はじっとオルトロックを睨みつけながら小刀を構えた。 『何をしようが最早無意味だ。貴様もろとも、全てを破壊してやる』 瞬時、オルトロックの姿が消えた。無音。聞こえるのは、止む事の無い、雨の音だけ。 邪悪な気配を感じた瞬間、助走から一気に飛び上がったオルトロックが、刃を隆昭とメルフィーに目掛けて振り下ろしながら落ちてくる。 「それ以上……俺の嫁に踏みこむな!」 逆手持ちした小刀を掲げながら体を捻らせ、隆昭はオルトロックの刃を受け止める。重量と共に振り落とされた刃が、小刀を叩き付ける。 炎の様に飛び散っては眩く、攻撃的な火花の閃光が部屋を照らす。二人の男の意地を体現しているのか、ぶつかり合う刃と刃が叫ぶような共鳴音を出す。 瞬間的に小刀を持ち変えて、オルトロックへと斬りかかる。図体に似合わず身軽な動作で、オルトロックは後方へとバックステップした。 「ちっ!」 積極的に踏み込みながら斬り込んでいくが、オルトロックは巧みに、隆昭の攻撃を受け流す。 振り下ろせば弾かれ、突けば避けられ、逆手持ちしながら振り上げるものの、寸でで後方へと下がられる。 舌打ちをして隆昭は小刀をブーメランの要領でぶん投げた。回転しながら向かってる小刀は容易に弾き飛ばされ、た。 「こいつは……どうだ!」 左袖からもう片方の小刀を取り出して鞘を叩き落とし、隆昭はオルトロックの頭上へと飛び跳ねた。 『無駄だ』 上からの奇襲にも反応を見せず、オルトロックは左手の刃を伸縮させた。高速で伸びる刃が、小刀を持つ左腕へと迫る。 突貫。5つの刃が、隆昭の右腕に突き刺さって貫通した。一瞬苦痛に顔を歪ませながらも、隆昭は持っている小刀を放り、右手で受け止めた。 そして頭部目掛けて、小刀を全力でナイフ投げの要領でぶん投げた。オルトロックの頭部に、隆昭が投げた小刀が突き刺さる。 が、オルトロックは痛くも痒くも無いのか、右手で小刀を引きずりだすと、乱暴に叩き落とす。 伸縮させた刃を戻すと、隆昭はその場にうつ伏せになって突っ伏した。激痛ではあるが、アドレナリンの異常分泌で鈍く感じている。 勝者の余裕か、一歩一歩踏みしめる様に、オルトロックが隆昭の元へと話しながら歩いてくる。 『抗うな。自らの弱さを認め、私に屈服しろ、鈴木隆昭。どちらにしろ、私の手でこの世界は終焉を迎える』 「……馬鹿じゃねえか、お前。諦めなきゃ負けじゃねえんだよ。手前如きに支配される程、この世界は弱くねえ」 『……悲しき男だ。だが』 歩みを止め、隆昭に十刃を向ける。これを伸縮させ胸元に掛けて突き刺せば、確実に鈴木隆昭は。死ぬ。 『何にせよ手間が省けた。貴様の命運も人生も、そして運命もここで潰える』 「……そして手前が思うほど、メルフィーは弱くねえよ」 『せめてもの慈悲だ。楽に……殺してやる!』 十刃全てが隆昭に向かって最高速で伸びていく。最早希望は――――――――――――――。 「俺の、嫁だからな」 <Transformation EXSEED> 十刃が空中でふわりと浮かんでは、床面に突き刺さっていく。十刃全て、根元から綺麗に切断されている。 美しき軌道を描きながらオルトロックの攻撃を防いだ、蒼く静謐な光を宿した銀色に光る日本刀―――――――――天照を、それは静かに振り下ろす。 『貴……様』 隙を与えず、それは床面を蹴り上げて短い間隔で助走を付けると、オルトロックへと両足を使った飛び蹴りを放つ。 その威力はそれの姿とは想像できないほど凄まじく、オルトロックは両腕で防ぐ間も無く壁面を巻き込みながら吹っ飛ばされていく。 左腕を押えながら立ち上がった隆昭は口元に笑みを浮かべながら、晴れてきた硝煙から姿を現したそれに、声を掛けた。 「最高の……タイミングだよ、メルフィー」 深く蒼いラインが織り込まれた、女性的なラインながらも、男性的な強さを感じさせるフォルム。そして頭部を覆う、白いヘルメット。 バイザー奥から見える、全てを見据える美麗な蒼色の光を放ちながら、それは隆昭へと首を動かし、背中の鞘に天照を納める。 姿見は細いものの、全身から感じるオーラは逞しく、また神聖さを感じさせる。隆昭が変身したハクタカと似て非なる。 それの名はヴィル・フェアリスを超えしヴィル・フェアリス―――――――――――ヴィル・フェアリス・エクシードライヴ。 全ての機能がヴィル・フェアリスを遥かに凌駕し、尚且つCASであるヴィルも最新型にアップデートされている。 『ヴィル、オルトロックは?』 <目標との距離、750。遠距離砲撃による追撃を提案> 『分かった』 「メルフィー……」 近づこうとする隆昭をメルフィーは一瞥すると、敢えてだろう冷淡な声で伝える。 『下がっていて下さい。ここは危険です。それに……邪魔になります』 邪魔と言われて多少なりショックを受けるものの、至極的確で冷静な判断だ。隆昭は満足げに微笑むと、メルフィーに、伝える。 「……頼んだぜ、メルフィー」 瞬間、隆昭の姿がその場から煙の様に消える。メルフィーは何も言わず、ただ深く、頷いた。 『今更覚醒した所で……無駄な足掻きだ!』 エネルギーを充填させながら、オルトロックは立ち上がり遠方に見えるメルフィーに向かって両手を向ける。 充填されるエネルギーによって赤く発光しながら掌に備われている砲口から、巨大な光の渦を巻きながら真紅のビームが発射された。 立ち阻む壁面を容赦無く蒸発させながら向かってくるビームに、メルフィーは再び天照を鞘から抜くと、逆手持ちした。そして。 <反ビーム属性フィールド発動> 『はぁっ!』 天照を突き刺した途端、向かってきたビームが二又に切断され、メルフィーの左右を通り過ぎていく。 直撃している筈だが、天照はオルトロックの放ったビームに傷つく様子も無く、折れる様子も無い。 追尾機能を要するそのビームは雨の降る外へと飛んでいくと、当然ながら、曲がって一つとなり、メルフィーの背後へと一直線に伸びていく。 『消えろ!』 再び放たれる、真紅のビーム。前と後ろから迫って来るオルトロックの魔手に、メルフィーは静かに目を閉じ、唱えた。 『――――――――――――水月』 <ミラージュテレポ―ション発動> 陽炎の様にメルフィーの姿が揺らいだ瞬間、メルフィーはその場から姿を消した。 目標が消えた事により、二つのビームはぶつかり合い相殺される。混ざり合ったビームは球体となって膨らむと、部屋どころか階自体を眩く光らせて―――――爆発した。 爆発によって柱が割れ、床面が抜け、廃墟が崩落していく。ドミノ倒しの様に薙ぎ倒れていく、壁面。床面を破壊していく、コンクリートの鉄塊。 膨大な被害にオルトロックは少々やりすぎたとはいえ、メルフィーを倒せたと……。 『捉えた』 反応、出来ない。目の前には、拳を握ったメルフィーの姿が、見えた。 『馬……鹿な』 頭部に叩き込まれる、メルフィーの踵落とし。頭部の装甲ににひびが入る音がし、オルトロックの額からブシュっと音を立てて黒い液体が噴出する。 続けて腹部に次々と乱打乱打乱打。装甲をデコボコに凹ませながら、重く強く、魂の籠ったメルフィーの鉄拳が、オルトロックを打ちのめす。 想像だにしなかった高いダメージに、オルトロックは思わず片膝を付いた。流れる様に華麗な動作で鞘から天照を抜き、メルフィーが決着を付ける為に、斬りかかる。 『女狐が……図に乗るな!』 右手にグラン・ファードを召喚し、オルトロックは振り下ろされたメルフィーの天照を防ぎながら、右方からメルフィーを斬ろうとグラン・ファードを振り回す。 が、メルフィーは先を読んでいたのか、グラン・ファードが視界に入った瞬間、右足で地面を蹴り上げて飛ぶと、グラン・ファードの両刃に、軽々と左足で乗った。 『踏み台にしただと!?』 グラン・ファードを思いっきり蹴り上げると、両刃を真っ二つに割れて粉砕される。グラン・ファードを粉砕しながら、メルフィーは空中へと飛翔し、宙返りをする。 そして――――――――――回転による遠心力を加えた後ろ回し蹴りを、頭部目掛けて叩き込んだ。 その威力の高さに、ディスの頭部がパズルの様に剥がれ落ちていき、オルトロックの驚嘆した口が見えた。 重い。全ての攻撃が、重すぎる。体格差も性能も、全て此方が勝っている筈なのに何だ? 何だ……あの戦闘能力の高さは……!? 『これで決める!』 呆けていた瞬間、メルフィーが背中に鷹の翼を彷彿とさせる、蒼く発光しながら成形された光の翼を瞬かせながら天照を突きだして突っ込んでくる。 『うおぉぉぉぉぉぁぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』 抵抗する暇など与えない。腹部を貫通させて突き刺したまま、メルフィーはオルトロックをそのまま外に向かって最高速で飛んでいく。 凄まじい勢いで床面を抉りだしながらメルフィーは更に、天照を突き刺していく。オルトロックの口から液体がドボドボと零れだし、天照の刃先を黒く濡らす。 これで決着が付く……筈が無い。オルトロックの両目は執念を感じさせるが如く、毒々しい赤色を取り戻す。 『私が……負ける……? ふざ……けるなぁぁぁぁぁぁ!』 両手で天照を掴みながら踏ん張り、オルトロックは天照を叩き折った。メルフィーの勢いが収まり、ギリギリの所で止まった。 恐るべき事に腹部のみなならず、背部の飛翔ユニットごと天照は貫通されており、機能を停止させていたのだ。 もしこのままメルフィーを止めなければ、飛ぶ事が出来ずにどちらにしろ……。 何にせよメルフィーの猛攻を食いとめた。このまま圧されている訳に……は? オルトロックが思考する事を一旦止めて前を向くと、メルフィーが自分に向かって、頭部を振り下ろした。これは……頭突―――――――――――――――。 メルフィーの渾身の頭突きを食らった瞬間、頭部を守っていたヘルメットに、蜘蛛の巣の様なひびが入り、やがて大きな音を立てながら完全に剥がれ落ちていく。 曝け出される、液体塗れのオルトロックの、顔、天照を投げ捨て、メルフィーは左足を踏みこんで右腕を引くと、ヴィルに叫んだ。 『ヴァリスタス・エンゲージ!』 <ターゲット認識。アイルニトル直接接続開始。発動まで30> 「この……クソったれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 歯を剥き出しながら激しい怒気を絡ませた目を浮かべ、端正な顔立ちを歪めながらオルトロックがメルフィーに向かって握った右手を振り下ろした。 <アンカーポイント射出。バーストトライアル三点、ロック。発動まで20> 『エクシードグレイヴ……』 「死ねぇ!」 メルフィー、もといヴィルのヘルメットがオルトロックの拳を食らい、二つに割れる。 その中から額に血を流しながら露わになる、メルフィーの顔。しかし、オルトロックを見上げるメルフィーの目に、淀みも、迷いも、無い。 <アイルニトル正常起動、及び充填率100パーセント。攻撃可能> 『ヴァーストォォォォォォォォ!!』 瞬間、メルフィーの右手から放たれた、蒼い神龍を象ったエネルギーの衝撃波が、オルトロックを飲みこんだ。 神龍に飲みこまれた瞬間、オルトロックを保護していたディスの装甲が光に包みこまれる様にゆっくりと蒸発していく。 オルトロックを飲み込んだまま、神龍は天に向かって伸びていく。その勢いは止まる事無く、オルトロックの視界は次々と閉じていく。 『また……負けるのか……?』 成層圏を抜け、大気圏を突破して神龍は地球を脱した。消えていく、機械のパーツ。オルトロックの顔は、もう、人ではなかった。 『過去を……変えれば……全てを……支配……出来ると……』 最後の一点を残して、視界が消える。その一点が消えた瞬間、オルトロックは、絶叫した。 『ち……くしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!』 天空を一片の隙間も無く覆っていた暗雲が、少しづつ晴れていく。永遠に続きそうな激しい雨の勢いも穏やかに弱まって行き、やがて、止む。 代わりにオレンジ色の水彩画の様にぼんやりと歪んだ、しかし美しい夕日が、倒壊していく廃墟の背景でゆったりと沈んでいく。 下では廃墟が倒壊している爆音に驚嘆した野次馬達が、一人、二人と増えていく。 そんな一部始終を、メルフィーを両腕で抱きながら、一人のスーツを着た女性が廃墟より幾分離れたビルの屋上から眺めている。 銀色の長い髪を横に束ねた女性は、抱き抱えているメルフィーの顔を見ると、健闘を称える様にメルフィーの頭を撫でて、言った。 「ありがとう。昔の、私」 風が吹いた瞬間、女性の影も形も、屋上から消えた。女性の姿を見た者は、誰も、居ない。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 白い天井に眩しいほどに明るい蛍光灯の下の元、白衣を着た人々が慌ただしく動いている。 蛍光灯の下には半透明の大きなカプセル状のベットが横4列縦8列になって並んでおり、傍らでは様々な人が、カプセル内で眠っている人に心配や不安の目を向けている。 人々が行来きして狭苦しい通路を、白衣のポケットに両手を突っ込んで胸元のポケットにペンライトを入れた女性が悠然と歩く。 女性は相当の権威を持っているのか、白衣の人々が通るたびに一礼していく。女性はそれに軽く会釈を返す。 大部屋を出てしばらく歩き、緊急救命室と銘打ってある部屋へと指紋を照合する。自動ドアが開いて、女性はその中に入って行く。 「調子はどう? 草川君」 4基のカプセルベットの内の3基で目を閉じたまま安静状態となっているルナ、町子、そしてメルフィー。 3人をガラス窓越しから見ている草川に、未来世界での町子・スネイルがペンライトをクルクルと回しながら、声を掛けた。 「まだまだ絶対安静……。だが三日もあれば治るんだろう?」 「三日ないし二日ね。多分。ルナはもう少しで危ない所だったけど、鈴木君がナイスタイミングで助けてくれたから助かりそうよ」 「そうか……良かった」 ほっと胸を撫で下ろし、草川は再び三人に向き直る。そして煙草を一本取り出し咥えると、ポツリと、呟いた。 「これで……良かったんだよな。これでルナ……いや、この3人の未来は、俺達の未来から分岐したんだよな」 草川の言葉に、町子はペンを回し続けたまま、天井の蛍光灯を見上げながら答えた。 「さぁ……?」 「さぁ……ってお前」 「でもこれで、少なくともオルトロックという要素が関わる未来は無くなった。つ、ま、りあの世界……ううん、もうその時点で、未来は変わったって言っても良いと思う」 回している手を止めて、指を指す様に、町子が草川に言葉を紡ぐ。 ・ ・ ・ ・ ・ 「私達を裏切ったオリジナルのオルトロックは、私達と提携して作りだした過去へと行けるタイムホールを使って、自らの目的を果たそうとした」 「だけど寸ででその目的に気付いた鈴木君は、兼ねて開発していたバトルスーツなる兵器を使い、戦いの末にオルトロックを倒した。ま、率直に言えば殺したんだけど」 ペンライトをポケットに仕舞い、自らもガラス窓の前に立つと屈んで3人に目を向ける。 「だけどオルトロックは死ぬ寸前に、自分自身の性格や能力をほぼ完璧に模倣したアンドロイドを創り出してバトルスーツとそれに付加するカードを盗み出し、タイムホールへと突っ込んだ」 振り返ってペンライトを教卓で弁を振るう教師の様に軽く振り回しながら、続ける。 「本当だったらメルフィーが彼女を救えれば良かったんだけど、常に戦線を率いる彼女にそんな余裕はない。だから」 「昔のメルフィーにオルトロックを倒す様に託した……って事だな。……大博打ってレベルじゃねえな」 「博打も博打、というか馬鹿よ、彼。明らかに勝てる要素は何一つ無かったわ。だって本当に彼女、ただの女子高生に過ぎないんだから」 「だが、勝利した。俺の愛する嫁、だからな」 何時の間に入ってきた、左腕に大きな包帯を巻いた隆昭が、自慢げな表情で二人にそう言った。苦笑する町子。 「お前もう戻ってきて大丈夫なのか? まだあっちで寝てた方が」 「バーロー、こんなもん明日になりゃ治る。それより……大丈夫なのか、3人は」 町子は答えず、ペンライトをガラス窓に黙って向ける。3人に目を向けながら、隆昭は言う。 「流石に若いだけ合って回復力が速いわ。長くても3日間あれば過去に戻せそうよ。何も無きゃ、だけど」 「そうか……」 ベッドの上で目を閉じたまま、全てが終わった事に安らいでいるのか幸せそうに笑みを浮かべながら眠っているメルフィーを見、隆昭は呟いた。 「……メルフィー、言ってたよ。過去の私には、こんな世界を送らせたくないって」 「普通に勉強して、普通に恋愛して、普通に……普通に平和な世界で、生き続けて欲しいってさ」 隆昭の言葉に草川も町子も、ただ、俯いた。隆昭は町子に聞く。 「消すんだろ、記憶。流石にぶっ壊れたマンションと学校の屋上は消せないけど」 「可能な限り、携わった人達の記憶は消去するつもり。あっち側に飛んでね。何だったら隠蔽の為に人手を使っても」 「いや、良い」 「記憶を消すだけいいよ。下手な事をして時間軸に影響が出たら厄介な事になる」 「そういや、ルナとメルフィーちゃんは?」 「今日は東北の方に行ってるよ。イルミナスの活動拠点が見つかってな、ぶっ潰してきて今日中にでも帰って来るだろ。あぁそうそう、ルナがお前に伝言だってさ」 「何だよ?」 「戻ってきたら覚悟しとけってよ。過去の私にやってきた事を、きっちり返してやるだと」 隆昭の伝言に、草川の顔が青ざめると深くため息を吐いた。そんな草川を笑う、隆昭と町子。 「……じゃあ俺行くわ。新人共がさっきからピンチらしくてな。今すぐ支援が欲しいって」 「鎮痛剤打っとく?」 「いや、直接闘う訳じゃないから良いよ。あー、そうそう、町子、メルフィーが帰ってきたら伝えといてくれ」 「落ち着いたらサンドイッチ、皆で一緒に食おうってな」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 何か、凄く長い夢を見ていた様な気がする。 だけど夢の内容は思いだせないし、別に思い出すような内容じゃないと思う。今日もまた、普通の1日が始まる 階段を下りて洗面台で、寝ててクシャクシャになった髪を整える。うん……これで大丈夫。 冷たい水で顔を洗いながら、寝ぼけている頭をどうにか目覚めさせて再び二階に上がる。早く着替えて学校に行く準備をしなくては。 パジャマから制服に着替える。胸のリボンを結んでっと……これで良し。少しでもズレてると注意されるから、しっかり整えないと。 階段を下りると、リビングからお母さんの作っている朝食の美味しそうな匂いがした。今日はパンと目玉焼き……ううん、スクランブルエッグかもしれない。 ダイニングに着いてテーブルの上を見ると、スクランブルエッグだった。少しだけラッキー。早速席に座る。 「おっはようメルフィー。飲み物何飲む?」 キッチンで皿を洗いながら、挨拶間際、母さんが何を飲むかを聞いて来た。勿論朝はアレに決まってる。 「おはよー、母さん。んーと……牛乳入れてくれる? ありがとね」 「良いの良いの。しっかり食べて、授業に備えてね」 母さんが自分の珈琲と、私が飲む牛乳を入れた二人分のマグカップをテーブルに置き、向かい側の席に座った。 喉に牛乳を流し込むと、その冷たさから頭が冴えてきた気がする。焼きたてのパンもカリッとした後、フワッとした甘みがあっておいしい。 そう言えば……何時もは……って珍しくお父さんが居る。ご飯の前に新聞を広げて……。今日は研究所がそんな忙しくないんだ。 「おはよう、お父さん」 私の声にお父さんは新聞紙から少しだけ顔を出して、ボソッと言う。 「おはよう」 テレビを見ると、突如として建設を放棄していたマンションが倒壊したというニュースが流れていた。 別に大きな地震があった訳でもないのに不思議な事件だなーと寝ぼけた頭でぼんやりと思う。 次のニュースも月に小さなクレーターが出来たって言うニュース。こっちは別にそんな興味も無い。さっさとご飯を食べて学校に行かなきゃ 「ごちそうさまー。美味しかったよ、お母さん。レストラン開け……」 私は席から立ち上がって、食器を洗う為にキッチンに向かう。 お世辞を行ってちょっぴりでも小遣いが上がれば良いなと思ったけど、流石に阿呆すぎる。 「ん、何? メルフィー」 「ううん、何でもない」 母さんと特に意味の無い会話をしながら食器を洗い終わり、用意してくれたお弁当をカバンに詰める。 ついでに必要な物を忘れていないかチェックする。文房具、教科書etc……。バッチリ。これで特に心配事は無い……かな。ちゃんと忘れがちなジャージも入っている。 玄関へと向かい、靴を履く。母さんが玄関で見送ってくれる。これが地味に嬉しい。 「それじゃ行ってきます」 「はいはい、行ってらっしゃい。ちゃんと定時には帰ってくるのよ。まぁ……遅くなるなら連絡してね」 「はーい。じゃ、改めて行ってきます」 母さんに手を振りながら、私はドアを開けて外に出た。気持ちの良い、突き抜けるような青空と、眩しい太陽が見えて清々しい気分になる。 何だか今日は妙な予感がする。妙といっても悪い意味では無く、何かとんでもない事が置きそうな。 けどそんな予感は常に肩すかしだ。それかとっても小さい事。ま、期待しないで今日も一日頑張ろう。そう思って歩き出す。 何となく空が青くて気持ちが良い。私はグーッと胸を伸ばして、何故だか分からないけどよっしゃ! って気分になって走りだした。 走ると前から来る風が爽やかで、とっても気持ちが良い。そこの角を曲がろうとした、瞬間! 「うわっ!」 「きゃっ!」 いきなり人にぶつかってしまった。私は立ち上がって、慌ててその人に頭を下げた。 「ご、ごめんなさい! 私が急いでたせいで……」 「いや、俺もボーっと浮かれてたんだ。そうだ、良かったらちょっと聞きたいんだけど、良いかな?」 未来形! 魔法少女 ヴィヴィっと! メルちゃん 「良いですけど……」 「あ、その前に俺の名前なんだけど……俺、鈴木隆昭って言うんだ。君の名前は?」 「私は……」 The future, it is not one. 「メルフィー、ストレインと言います」 了 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
https://w.atwiki.jp/2023/pages/80.html
参加メンバー レン/GUMPEST 化蟹漁師ミリー 鉱石人 事件の経緯 (part102)にて発生。 突如街に現れたきるどーるのメカ「カブトブジン」! 3人の狙いはGUMPEST V2のデータだった! 着ぐるみ電波で人々にオスのカブトムシ着ぐるみを着せていくメカ。 ミリーとキンバリーも例外なく着せられ、行動を制限される… さらには物理攻撃のバリアによりミリーの銛も防がれてしまう。 そこへ駆けつけたGUMPEST V2!突進を決めて登場した! が、電波の範囲内だったのでカブトムシ着ぐるみを着せられました。 遠距離バリアも近接攻撃バリアもあるカブトブジンに苦戦する3人… さらに3人がGUMPEST V2のデータを読み取っていたため奥の手も使いかねていた… しかし「バリアの切り替え」という弱点を見つけた3人はタイミングを合わせて大技を繰り出す! その結果ミリーの銛が突き刺さり自爆装置が作動、ロボは爆発してきるどーるは星になったとさ… + めでたしめでたし…? …だがしかし、きるどーるはGUMPEST V2の名前と戦闘データを持ち帰っていた。 目的は果たされてしまったのだ… + おまけ 描写されていないが、 魔法少女ビーストこと古手取 妙子もカブトムシ着ぐるみを着せられており、 街路樹の樹液をめっちゃ舐めていたらしい。 きるどーる一行が自爆したときの轟音で危機を察知し、その際に正気に戻り自分が何してたかを知り赤面して逃げ帰ったそうな。